中津川翔太 x かとうれい「東京画宣言」[ 5/2 (sat) – 5/10 (sun) ]
中津川翔太、かとうれいの二人展「東京画宣言」を、5月2日 (土) より5月10日 (日) まで開催します。
中津川翔太は社会現象と言われるまでの人気番組となった「テラスハウス」の出演者として知られる東京藝大出身の美術家であり、かとうれいはロマンチックな女の子の世界観を描くモデルやアイドルなどに人気のイラストレーターと、これまで二人に表立った接点はなく、意外とも思われる組み合わせかもしれませんが、今回の二人展の開催経緯について、本展にあたって公開した作家インタビューのなかで、中津川翔太は、次のように語っています。
「元々、かとうれいくんとは共通の知り合いがいて出会って、それから何か一緒にやりたいねって話はしていて、今回、展示をやるにあたって、誰がいいんだろって考えたら、ただふわっとした感じで、れいくんがいいなって思った。でも、ジャンルが全く違うし、とも思ったけど、何か、なんだろうね。れいくんも日本ってのをテーマにしてる気がして、日本というか、カルチャーというか」
本展「東京画宣言」のタイトルは、ギャラリーから提案したものですが、これについては、「単純にいいなと思ったよね。結局、日本って言っても自分もれいくんも住んでるのは東京だし、見てるものは全部東京なんだよね。東京に住んで、見て、絵を描いてるわけだし、二人とも「東京画」を描いているんだと思う」と語っています。
また、本展は、中津川翔太主催、かとうれい参加という形の二人展であり、主催の中津川翔太は、本展の開催理由のひとつとして、「テラスハウス」出演による予期せぬ大きすぎる反響が美術家としての活動に支障をきたしていることを挙げ、「有名になり過ぎた。自分だけでなく、作品まで胡散臭いもののように思われてしまっている」と率直な心情を明かしています。
中津川翔太が本展に出展するのは、これまで実直に制作をし続けてきた日本画と漆彫刻という伝統的な手法の作品、それに対して、かとうれいの作品は現代的なイラストレーションであり、両者の作品が「東京画宣言」というキーワードによって結びつけられることで、展示会場にどのようなイメージが生み出されるのかをご注目ください。
TAV GALLERY STAFF
作家プロフィール
中津川翔太
1987年 神奈川県生まれ。東京藝術大学美術学部工芸科漆専攻。主な参加展示に、「牧師かマフィアか、コスプレか。」(2011年 ターナーギャラリー)、「おとこ展」(2012年 東京藝術大学大学会館展示室)、「TRANS ARTS TOKYO」 (2012年 東京電気大学校舎)、「五芸大漆工展」(2012年 ART SPACE SHIGEMATU、ぎおんギャラリー八坂)、「Japanese Contemporary Meets Tradition Shota Nakatsugawa & Sadamasa Imai」(2013年 Mizenka Gallery)。主な活動に、「ひかりの神輿パレード×日比野克彦 神輿制作」(2012年 東京スカイツリー) がある。
かとうれい
1992年生まれ、東京在住。きゅんっとしてドキドキするロマンチックな世界観を描くイラストレーター。グループ展「君はいなせなさまあ☆が~る展」(2014年9月2日-15日 YOYOGI ART GALLERY [東京])、「君はつれない東京♦少女展」(2015年2月10日-15日 Simokita Art Space [東京])では、主催を務めた。
開催概要
名称 : 中津川翔太 かとうれい 二人展「東京画宣言」
会期 : 2015年5月2日 (金) – 5月10日 (日)
会場 : TAV GALLERY (東京都杉並区阿佐谷北1-31-2) [03-3330-6881]
時間 : 11:00 – 20:00
入場料 : 500円 (ステッカー付き/再入場可)
作家インタビュー
美術家・中津川翔太
「胡散臭いものだと思われている。
それでも、自分の作品には自信がある」
中津川翔太が、美術の道に入ることを決めたのは高校生のとき、初めて、自分の将来、進路というものを考えたときに、テレビで、村上隆の作品が何億という値段で落札された、と報じられているのを見たことがきっかけだったという。正直に応える人は少ないだろうが、さして珍しい話でもないだろう。動機は不純と言われるかもしれないが、その後は人並み以上に努力をした。高校2年生から美術予備校に通い始め、卒業後3浪、5年かけて東京藝術大学への入学を果たした。在学中は、積極的には作品を発表せず、美術予備校の講師を務めながら、日本画と漆彫刻の制作を実直に行った。大きな変化が訪れたのは、在学4年のとき、学祭に来ていたテレビ番組プロデューサーとたまたま出会ったことがきっかけで、夢を追う若者が一軒家で暮らすという深夜番組に出演することになった。本人としては、卒業制作に取り組みやすい環境が手に入るという安易な気持ちだったが、その後、番組は社会現象と言われるほどまでの人気番組となる。番組の名前は「テラスハウス」。中津川はその反響を「有名になり過ぎた。自分だけでなく、作品まで胡散臭いもののように思われてしまっている」と戸惑いながら語る。これを単に軽率だったと片付けることは簡単だが、ある種の誤解が生じていることも事実だろう。展示開催にあたって、褒め上げるわけでも、卑下するわけでもなく、美術家としての等身大の中津川翔太に話を訊く−−。
−− 東京藝大のなかで工芸科を選んだのは何故ですか?
「自分はセンスが良くなかった。工芸科は基準が分かりやすくて、上手ければいいという。だから、凄い下手でもあったけど、飽きなければ、諦めなければ、工芸科は受かると思っていた。油画は、何だろう、単純に上手ければいいって訳じゃないんだと思う」
−− 今回の出展作品は、日本画と漆彫刻ですが、日本画はいつから描いているんですか?
「高校生とか、浪人中だったときに、天明屋尚さんの「ネオ日本画」とかが好きで、最初は東京藝大と東北芸術工科大学を日本画で受験していて、工芸科に入学後も学部1年のときには日本画の授業があって、美術を始めたときからずっと描き続けていますね」
−− 日本画と漆彫刻と、どちらも伝統的な日本文化ですが、表現手段として選んでいる理由を教えてください。
「小さいときから神社とかお寺とか、今の日本っていうより昔の日本が好きだったのが大きいんだと思う。今回の出展作品の日本画や漆彫刻は、先の天明屋尚さんの影響など、伝統的な作法に乗っ取って現代アートを制作するという、この延長線上のものですね」
−− 「テラスハウス」に出演したのは、卒制に取り組み始める直前とのことですが、迷いはなかったですか?
「深夜枠だし、あまり観られないと思っていた。卒制に集中できる環境が手に入りそうだし、まあ、いいかな、と、単純にそれだけだった。だけど、有名になり過ぎた。本当にびっくりしている。普通に美術家としてやっていこうと思っていたけど、 いま、自分だけでなく、作品まで胡散臭いもののように思われてしまっていて、ちょっと、人生狂ちゃって、戸惑っている最中ですね」
−− 番組に出演して、卒展にはさまざまな人が来たと思いますが、作品に対する反応はどうでしたか?
「卒展は、番組を抜けたあとだったんだけど、番組は抜けた後も追っかけるので、卒展にも来た。そのお陰で、ほんとにいろんな人が観てくれた。それは凄くいいんだけど、自分のことを知らない人のなかには、「テラスハウス」に出てた人って言われると、作品が胡散臭く見えてしまう人もいて、難しいなと感じた」
−− 作品が胡散臭く見られる、というのは、どういった反応から感じたんですか?
「反応っていうか、まあ、自分を客観的に見た判断ですね。結局は素人なんすよ。中途半端というか、まだ夢を追っかけてる状態の奴が、ばーんっ、とテレビに出たらそうなりますよね」
−− 大学卒業後、一度、ギャラリーに所属されていますが、それはテレビに出演していたことと関係ありますか?
「いや、卒展のときに声かけられたんですけど、向こうはテレビに出演していたことは全く知らなくて、逆に知って戸惑っていました。テレビに出演したことで、沢山の人に作品を観てもらえるという良い面ももちろんあったんですが、ただ、アートはどうしても、その観てくれる人たちと買うは、結び付きにくいですよね」
−− 中津川翔太ではない名前を名乗って美術家の活動をすることは考えませんでしたか?
「一度は考えたけど、結局、自分は自分だから。美術家以外の選択肢を考えたこともあるけど、やっぱり制作を止めることは出来ないし、自分1人では、2つの事はできないんですよね」
−− 美術家として、自分の作品には、どういった意味や価値があると考えていますか?
「意味はそこまで求めてない。今回、新作として出展する日本画は金魚をモチーフにしてるけど、何か意味あるんですか、って言われても、無い。ただ金魚には意味はないけど、金魚がいいなって思った事実はある。偶像崇拝をモチーフにした漆彫刻も純粋にいいなと思って作った」
−− 作品の意味と作品の価値は別だと捉えているということですか?
「自分の好きな横山大観とか、何かあの人達って、単純に好きなものを描いているだけで、コンセプチュアルに書いてる気がしなくて、それが好きだった。ギャラリストや批評家は、どのような語り方で作品を評価しても構わないと思っているけど、意味を語らなくても自分の作品には自信がありますね」
−− 展示を行うにあたって、二人展として、かとうれいを誘ったのは何故ですか?
「元々、かとうれいくんとは共通の知り合いがいて出会って、それから何か一緒にやりたいねって話はしていて、今回、展示をやるにあたって、誰がいいんだろって考えたら、ただふわっとした感じで、れいくんがいいなって思った。でも、ジャンルが全く違うし、とも思ったけど、何か、なんだろうね。れいくんも日本ってのをテーマにしてる気がして、日本というか、カルチャーというか」
−− アートとポップカルチャーの境界はどのように考えているんですか?
「れいくんはどう思っているか分からないけど、ジャンルがなんであっても、自分は、れいくんのやってる事はアートだと思う。自分がいいと思うものを表現してたら、それが、アートなんじゃないかなと思っている」
−− 今回の「東京画宣言」というタイトルはギャラリーからの提案ですが、どう思われましたか?
「単純にいいなと思ったよね。自分は住むなら絶対に東京だと思っているからね。何をやるかにもよるけど、何か発信する人間であるのであれば、やっぱ東京でやっていかないと駄目だと思う。結局、日本って言っても自分もれいくんも住んでるのは東京だし、見てるものは全部東京なんだよね。東京に住んで、見て、絵を描いてるわけだし、2人とも「東京画」を描いているんだと思う」
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