「TOTALTOPIA」[ 2/10 (sat) – 2/12 (mon) ]


 

風間サチコ『黒い花電車 僕の代』2015年 リノカット

 


 

AMSEA 主催による企画展「TOTALTOPIA」を2月10日 (土) から2月12日 (月) まで開催致します。参加アーティストは、大木裕之、風間サチコ、潘逸舟、布施琳太郎、山田周平、和田昌宏の6名。

 

AMSEA (東京大学|社会を指向する芸術のためのアートマネジメント育成事業) は、ソーシャリー・エンゲージド・アート、ソーシャル・プラクティス、参加型アート、対話型アート等ひろがりをみせる「社会を指向する芸術」と社会との交差地点を求め、その架け橋たりうるアートマネージャーを育成するための教育プログラムです。

 

本展覧会はそのプログラムの一環として開催されるもので、国家と全体主義をテーマとしています。

 

TAV GALLERY STAFF

 


 

開催概要

名称 : TOTALTOPIA
会期 : 2018年2月10日 (土) – 2月12日 (月)
会場 : TAV GALLERY (東京都杉並区阿佐谷北1-31-2) [03-3330-6881]
時間 : 13:00 – 20:00

参加作家 : 大木裕之、風間サチコ、潘逸舟、布施琳太郎、山田周平、和田昌宏

主催 : AMSEA : 東京大学 | 社会を指向する芸術のためのアートマネジメント育成事業
           The University of Tokyo | Art Management of Socially Engaged Art
           平成29年度 文化庁「大学を活用した文化芸術推進事業」
協力 : AISHO MIURA、URANO、無人島プロダクション
企画 : 島林秀行、鷹野健

Reception Party : 2月11日 (日・建国記念日) 18:00 – 20:00

 


 

<本展に寄せて>

 

いま、世界各国で国家の枠組みの再強化や極右勢力の台頭、特定層の排除などがみられる。日本では特定秘密保護法、安全保障関連法、テロ等準備罪が成立し、憲法改正が行われようとしている。

 

これらはかつての歴史を繰り返そうとするものなのか。ハンナ・アーレントの『全体主義の起源』やジョージ・オーウェルの『1984』への関心の高まりは何を意味するのか。

 

問いは続く。

個が “全体” に呑まれるとき、それは自ら進んでなのか。気付かぬままに呑まれるのか。それとも、そうした状況に気付き、抵抗するのか。

 

問いは続く。

“TOTALTOPIA” という言葉が境界付ける空間で生じるのは、”全体” に対する憧憬か諦念か、それとも抵抗か。

 

問いは続く。

芸術の自由と無責任はどこまで共有されるのか。

 

問いは続く。

 


 

アーティストプロフィール

 

『松前君のまんじまんじゅのための映画』2014年 5min ビデオ
©Hiroyuki Oki, Courtesy of URANO

大木裕之

1964年生まれ。アーティスト兼建築家。映像というメディアを通して、「思考すること」を真摯に探求し続けている。東京大学工学部建築学科在学中の80年代後半より映像制作を始めた。1995年には「天国の六つの箱 HEAVEN-6-BOX」(1994-95) で、第45回ベルリン国際映画祭ネットパック賞を受賞。その後、表現活動は、映像制作に留まらず、ライブ上映、インスタレーション、身体パフォーマンス、ドローイングやペインティングにまで及ぶ。1999年の「時代の体温」(世田谷美術館) を皮切りに、「How Latitudes Become Forms」(2003年・ウォーカーアートセンター、米国) 、「六本木クロッシング」(2004年・森美術館) 、シャールジャ・ビエンナーレ (2007年) 、「Out of the Ordinary」(2007年・ロサンゼルス現代美術館 MOCA) 、「マイクロポップの時代:夏への扉」(2007年・水戸芸術館) 、「[被曝70周年: ヒロシマを見つめる三部作 第1部] ライフ=ワーク」(2015年・広島市現代美術館) 、愛知トリエンナーレ (2016年) など、国内外の展覧会に多数参加している。

『超全体主義的性交』(2000年制作、52分) は、大木が「部屋」と呼ぶ1本40秒の映像を8×8=64本組み合わせた映像の構築物である。”権力” とは一部の者を指すのではなく、誰もが誰かに対して権力をふるうものであり、全体主義的性向を持つと言えるだろうか。本作では、それぞれの「部屋」における芸術家や被写体、撮影者に働く権力的な力学を垣間見ることができる。また、”全体” を想定した上での「部屋」と「部屋」の管理的な調整と、そうした枠組みを打ち破るかのような生/性の運動が提示される。本展では、建築家としての一面を生かし、誰もが成り得る「権力の犬」や誰に対しても成り得る「権力の番犬」を意識し、犬小屋の制作も試みる。

 

 

『人外交差点』2013年 木版画
©Sachiko Kazama
Courtesy of Mori Art Museum

風間サチコ

1972年生まれ。「現在」起きている現象の根源を「過去」に探り、「未来」に垂れこむ暗雲を予兆させる黒い木版画を中心に制作する。一つの画面に様々なモチーフが盛り込まれ構成された木版画は漫画風でナンセンス、黒一色のみの単色でありながら濃淡を駆使するなど多彩な表現を試み、彫刻刀によるシャープな描線によってきわどいテーマを巧みに表現する。風間は作品のなかで、現代社会や歴史の直視しがたい現実が、時には滑稽でコミカルに見えてしまう場面を捉えようとしている。そこには作家自身が社会の当事者であるよりも、むしろ観察者でありたいという意識が反映されている。作品はフィクションの世界だが、制作に際しては古書研究をするなど独自のリサーチを徹底し、現実や歴史の黒い闇を彫りおこすことで、真実から嘘を抉り出し、嘘から真実を描き出す。

本展では、戦時中の1940年に開かれた紀元二千六百年記念行事 (神国日本という国体観念のもと、神話上の初代天皇・神武天皇の即位を記念した大規模行事) を参照した作品『黒い花電車 僕の代』(2015年制作、リノカット) を展示する。

 

 

『ぬりえ』2017年 布の裏面にアクリル
Courtesy of URANO Photo by Fuyumi Murata

潘逸舟

1987年生まれ。社会と個の関係の中で生じる疑問や戸惑いを、自らの身体や身の回りの日用品を用いて、映像作品、インスタレーション、写真、絵画など様々なメディアを駆使しながら、真摯に、時にユーモアを交えながら表現する。「アジアン・アナーキー・アライアンス」(2014年・開渡美術館, 台湾) 、「Whose game is it?」(2015年・ロイヤルガレッジオブアーツ, ロンドン, 英国) 、「In the Wake – Japanese Photographers Respond to 3/11」(2015年・ボストン美術館、マサチューセッツ / 2016年・ジャパンソサエティー、NY、米国) 、「Sights and Sounds: Highlights」(2016年・ジューイッシュミュージアム、NY、米国) など数々のグループ展に出展している。2015年にニューヨークでのアーティストインレジデンスプログラムに参加。2017年には個展「The Drifting Thinker」が上海MoCAパビリオンで開催され、同年Art Basel Hong Kong 2017のディスカバリーズ・セクターにて新作を発表した。

本展では共同体の存在と向き合う新作を展示する。

 

 

『存在の生成と消滅のparallax』2017年 インスタレーション

布施琳太郎

1994年生まれ。美術家。東京芸術大学 大学院映像研究科 メディア映像専攻在籍。同時代のシチュエーションを独自のパースペクティブによってインスタレーションや展覧会企画などへ変換し、プレゼンテーションしている。主な展覧会企画に、横浜の歴史とSF映画/小説の「惑星ソラリス」をオーバーラップした『ソラリスの酒場』(the Cave/Bar333, 2018)や、インターネットで集めたクリエイターの作品をビルの屋上に散乱させ天候の変化とともに朽ちさせていく『新しい孤独』(コ本や、2017)、4つの展覧会企画を1つの地下空間で行なった『iphone mural(iPhoneの洞窟壁画)』など多数。

本展では映像を中心としたアッサンブラージュを制作する。世界大戦時のとある私企業の振る舞いを起点として「国家と個人」の関係性について言及する中で、時代とともに揺らぎながら変化するそれぞれのアウトラインを描出する。

 

 

『OCCUPY』2012年 Inkjet print, wood,
photo by wakabayashi

山田周平

1974年生まれ。社会状況に対する考察を通じ、写真、映像、立体、インスタレーションと様々な制作活動を展開。 2003年に写真新世紀優秀賞受賞。 国内にとどまらず、香港やヴェトナムなど海外でも精力的に展示を展示している。第二次世界大戦における日米の空中戦や原爆投下の記録映像をもとにした作品『Simulated sky』は、アンディ・ウォーホール美術館長の推薦により、2013年のアーモリーショー (NY) のフォー カス部門に出展して注目を集めた。2017年はISCPでNYで滞在制作を行っており、本展が帰国後初の展示となる。

『明るい』(2017年制作、LED) は、明るい光で「明るい」と自ら表明し、それ以外の多様性を排除する閉じた自己完結性を有する。小説『1984』のニュースピークの人工性と簡潔性を彷彿とさせるこの光が照らし出すのは、全体主義的社会や管理社会が掲げる白々しい希望か、その裏返しとしての茫漠とした不安か。あるいは自らの成功/性向を称揚するスローガンか。また、共同体について言及する新作を発表する。

 

 

2014年 横浜トリエンナーレでの展示風景

和田昌宏

1977年東京生まれ。1999年多摩美術大学中退。2001年東京都拝島の米軍ハウスにて “HOMEBASE” の企画・運営を開始。2004年ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ ファイン・アート卒業。グループ展に2015年「Invisible Energy」(ST PAUL St Gallery One and Two、オークランド、ニュージーランド) 、「あざみ野コンテンポラリーvol.6 もうひとつの選択 Alternative Choice」(横浜市民ギャラリーあざみ野、神奈川) 。個展に「Rμv-1/2gμvR=(8πG/c^4)Tμv」(LOKO GALLERY) 。最近ではAsian Art Award 2018のファイナリストとして選出され、3月に展示する予定。

本展の『SARU/KANI (寝言) 』(2015年、20分) では、川の字になって平和そうに寝ている家族3人の映像とともに、「平和安全法制」閣議決定後の安倍晋三内閣総理大臣による記者会見の言葉を寝言のように響かせ、家族と国家という2つの共同体を映し出す。