竹之内佑太「エントロピーとしての思考 / 重力としての制作」[ 10/21 (sat) – 11/7 (tue) ]


 

 

焼き物で立体作品を制作する現代美術家、竹之内佑太の個展「エントロピーとしての思考 重力としての制作」を10月21日 (土) から11月7日 (火) まで開催いたします。竹之内にとっては、2015年のなびす画廊における展覧会以来、2年ぶりの個展であり、TAV GALLERY では5回目となる、批評家・飯盛希によるキュレーションです。

 

竹之内は、多摩美術大学・工芸学科の出身であり、陶の技術に基づきながらも、独特の理論による制作を行っています。ユニットのような小作品をいくつも作り、それらを積み重ねて大きな作品を構成することが、その特徴であると言えます。キュレーターの飯盛による文章で示されているとおり、これは、頭のなかのイメージを焼き物で実現するために、一度、小さなパーツに分割しているのだと考えられます。

 

今回の個展では、そのような竹之内の制作方法を深く理解していただけるよう、完成した立体作品とともに、制作には至らなかったドローイングも合わせて展示します。また、それぞれの作品につけられた題名や展覧会タイトルの意味を考えながらご覧いただけますと、より彼の制作理論の本質に接近できるでしょう。独自の方法で立体作品を制作する竹之内佑太の個展に、是非とも足をお運びください。

 

TAV GALLERY STAFF

 


 

アーティストプロフィール

 

竹之内 佑太

1989  三重県生まれ
2014  多摩美術大学美術学部工芸学科 卒業
2015  相模原市アトリエ「モゲスタmogesta」にて製作中

受賞歴

2013  多摩美術大学芸術祭 審査員特別賞(「TETSUJIN工房」)同上混 合学科賞(「TETSUJIN工房」)
2012  みずなみ陶土フェスティバル 審査員特別賞
2008  津市美術展 津ロータリークラブ会長賞

主な個展

2017「エントロピーとしての思考 / 重力としての制作」TAV GALLERY、東京
2015「自発的な構造:Emigbja/D/」 なびす画廊、銀座
2015「デュアルコアストリーミング」(公開制作) DESK/okumura、東日本橋
2014「[Integra CeRa」なびす画廊、銀座
2013「[Playing CeRa-陶遊展」アートギャラリー石、銀座

主なグループ展

2017「亀山トリエンナーレ2017」亀山、三重
2016「いりや画廊企画若手支援プロジェクトvol.5 Polite」いりや画廊 東京
2014「SUPER OPEN STUDIO スーパーオープンスタジオ」(公開制作)モゲスタ、神奈川
2014「千代田芸術祭 3331アンデパンダン」アーツ千代田3331、東京
2013「第49回 神奈川県美術展」神奈川県民ホール、横浜
2013「TETSUJIN工房」多摩美術大学 イイオギャラリー、東京
2013「美大ラグビー部員による美術展」カンバラビル5F、上野
2012「循環の間」多摩美術大学 イイオギャラリー、東京
2012「Breath part-2」BankART Studio NYK – Mini Gallery、横浜
2012「Breath part-1」多摩美術大学 情報デザイン棟・芸術学棟ギャラリー、東京
2011「夢ビエンナーレ 入選作品展」八王子夢美術館、八王子
2009「フルテル展」Gallery one day、三重
2008「ヒーロー伊藤スタジオ美術研究所作品展08」三重県立美術館、三重
2008「Gallery one day展」Gallery one day、三重
2007「ヒーロー伊藤スタジオ美術研究所作品展07」三重県立美術館、三重
2006「ヒーロー伊藤スタジオ美術研究所作品展06」三重県立美術館、三重
2004「ヒーロー伊藤スタジオ美術研究所作品展04」津リージョンプラザ、三重
2003「ヒーロー伊藤スタジオ美術研究所作品展03」三重県立総合文化センター、三重
2002「ヒーロー伊藤スタジオ美術研究所作品展02」三重県立総合文化センター、三重

 


 

開催概要

名称 : 竹之内佑太 個展「エントロピーとしての思考 / 重力としての制作」
会期 : 2017年10月21日 (土) – 11月7日 (火)
会場 : TAV GALLERY (東京都杉並区阿佐谷北1-31-2) [03-3330-6881]
時間 : 13:00 – 20:00
休廊 : 水曜、木曜

Opening Party : 10月21日 (土) 18:00 – 20:00

 


 

展覧会に寄せて

 

アイデアの質量――あるいは彫刻のポテンシャル

飯盛 希

 

竹之内による一連の制作には、一つの「思考」が――いわば「地下茎」のように――通底している。ただし、その「思考」は、おそらく彼の制作全体にまで共通しているわけではない。つまり、この個展においてもそうだが、いくつかの作品が全体として一つの展覧会――ないし作品――として提示されるとき、それは一つの「問題系」を成しているのである。個々の作品は、それぞれ一つの「問題」に対応しており、事実――恣意的であるように思われるかもしれないが――、一つの命題もしくは概念が、タイトルとして与えられている。こうした作品の題名は、ある程度、具体化された「思考」の結果であるが、「エントロピーとしての思考/重力としての制作」という展覧会の題名は、今回の制作に関する、もっとも抽象的な理念である。

 

「エントロピー」という言葉は、すくなくとも竹之内の――あるいは一般的に――「思考」がもつ特徴を比喩的に表現していると思われる。すなわち、特殊化する「思考」は、けっして普遍的な次元には遡及しないで、発散するのである。これは、おそらく竹之内の「制作」が、陶芸の技術に基づいていることに由来する。つまり、焼成は不可逆的な工程であり、完成した陶器が、ふたたび土に還ることはないのである。

 

作者の「思考」において、漠然とした原初的な「アイデア」は、それを表現するための諸条件に則って、作品制作として構想される。構想されたイメージ――あるいは単に「構想」――は、「構造」として分解された上で、いくつかの「かたち」を与えられる――あるいは言語化される――。他方の「重力」という言葉は、質量をもつ作品として「アイデア」を実現するさい、それを重力の影響下に呈出するという「制作」の一面を表現していると考えられる。

 

竹之内の制作は、いくつものユニットを集積し、巨大な構造体を組み立てることで知られているが、大きな作品が単体で制作されることはない。小作品は「構造」を「分析」した結果であり、それ以上は分解できない「単位」であるが、一方、それを積み重ねて、より大きな作品を構築することは、いわば「総合」であり、ちょうど対立するプロセスにかかわっている。しかし、大作の「構想」が先立ち、それを解体して小作品をつくるのか、それとも「単位」から出発し、それを組織して大作をつくるのか、俄かには判断しづらい。鑑賞者は、あらかじめ構成された作品を目の前にするので、たとえば「ブリコラージュ」の彫刻であるような印象を受けるかもしれないが、竹之内にとっては「思考」なしに「制作」することは不可能であるようにも思われる。

 

単一の小作品と複数の小作品から成る大作の関係は、竹之内における「思考」と「制作」の位相差に対応している。展覧会タイトルにおける「思考/制作」という対句は、「理想と現実」のあいだを表しているようである。竹之内にとって「理想」は、まさしく「構想」どおりに、大きな「構造」を提示することだろう。しかし、「現実」の展示場所は、作品の規格を限定する――というのは、単にギャラリーが狭いというだけの意味ではないが、実際にも広くない――。そもそも、陶器を焼成するためには、一定の厚みに成形しなければならないし、窯の大きさにも制約があるので、大作を単体で制作するのは困難である。したがって、一度「構造」を分割し、それを重力の影響下において再構築できるよう、まさしく建築的なユニットとして小作品を制作するのだと考えられる。

 

そうして組み立てられる大作は、構造体というよりも、根源的なイメージにおいては、むしろ一つの「かたち」だったにちがいない。こうした制作方法は――理想的でないが――きわめて理論的であり、ある意味、還元主義的である。というのも、いわば小作品の集積によって大作を復元する過程に、いわゆる創発性は想定されていないからである。それはもっぱら「構想」の「想起」であり、鑑賞者に対しては、過不足なく作者の「思考」を提示することができる。竹之内において形式はメッセージなのである。