大里淳 個展「OUROBOROS」[ 7/9 (Tue) – 7/20 (Sat) ]


 

 

この度、現代美術家・大里淳の個展「OUROBOROS」をTAV GALLERYで開催する。

 

計画休廊を発表して以降、充分な時間ができた私は、政治的な正しさを必要とした作品が経済合理性とその需要に組み込まれたとき、大きな社会変革が訪れることを確信していた。例えば、その表現の希少性についてや、その有用性について。私刑、公刑に限らない創造された正義に従うことでしか報酬を得ることができなかったり、創造された正義に従うことでしか美術でところの「付加価値」を作れなくなっていたりするとしたら、一画廊の運営方針は勿論、経済合理性に従ったその実行プロセスは全て変わり得るだろう。新しい正義が台頭してきたときに、失われる社会構造や特定の人物に対して想いを馳せるとキリがないが、この話は私が大里淳の展覧会をTAV GALLERYで取り決めたことと関係している。

 

私は現代美術を特殊な欲動を露わにした知的産物だと考えており、つまるところ、もう一度現代美術を「バカバカしいもの」として還元したい。彼に声をかけたのは、そのような動機からだ。特定の人物を呪うためにつくられた呪物、デモを象るリアリズムや、バリアフリーの観点からの創作など、現代芸術が正義を語るのは「壊れかけた社会」に対するアンチテーゼなのだろう。だがそれらはエンターテイメントとして、カルチャーとして、極めて他者の介入可能性が少なく、鑑賞者を現実の空間にとどめるだけに過ぎない。私たちの欲動は、現実の延長上にある産物だけでは、もう決してとどまることはなく、加圧された二酸化炭素のように、機を狙って噴出する機会を窺っている。

 

大里淳は1994年生まれ、東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻を修了したアーティスト。彼の前腕にはコカ・コーラのバーコードのタトゥー(セルフレジで読み込んで支払いをすることで、会計システムをハックできる)が施されていたり、K-POPアイドルグループ・BTSをモチーフにしたシリーズでは、BTSの広告が使用されたガムを口の中に含んでは、その歌詞を一語一句キャンバスに吐きつけ付着させたりといった作品を発表している。ひょうひょうとした本人の態度とその軽薄な笑い方から、大里が決して今日に於ける正義や常識の枠からは取り扱う事が不可能である時代の歪みから産まれた漂流物のような存在として私の目には映っていた。歴史上、数多くの広告批判を行ったアーティストが存在する。大量生産、大量消費を批判したアンディー・ウォーホールや、広告を切り抜いて、広告主に身代金を要求したロシアのアーティビズムのコレクティブのヴォイナなど、大里の表現はそれらのどれとも違った、産業構造や消費構造の中から逸脱することはできないといった、私たちがその構造の助長者であることを知らしめることを狙った———入り口もなく出口もないまるで「ウロボロス」のような———表現を行っている。紀元前1600年前に作られたとされる「ウロボロス」の名称の意味は“永遠の循環”、“自己再生”などがあり、当展覧会にはうってつけの言葉となった。

 

当展では、国際的アイドルグループBTSへの羨望と投票制で進められる新たなアイドルへの追随の形で、ガムによって表した新作を発表する。現代美術家・大里淳のTAV GALLERYで初となる個展「OUROBOROS」に、どうかご注目いただききたい。

 

 

TAV GALLERY 佐藤栄祐

 


開催概要

名称:大里淳 個展「OUROBOROS」
会期:2024年7月9日(火)- 7月20日(土)
会場:TAV GALLERY(東京都港区西麻布2-7-5 ハウス西麻布4F)[080-1231-1112]
時間:13:00 – 20:00
休廊:日、月

Reception Party:2024年7月9日(火)19:00 – 21:00


 

大里淳 OSATO Jun

1994年生まれ、東京都出身

 

経歴
2019 東京藝術大学美術学部デザイン科 卒業
2021 東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻 修了

 

主な展示

2017 グループ展「AFTERALL」 @インド、ケーララ州コチ
2021 「CAF賞2021 入選作品展覧会」 @代官山ヒルサイドテラス
2022 「EASTEAST_2022」 @科学技術館
2023 個展「Chewing/Tuning」 @Extra Small, 東京
2024 個展「OUROBOROS」@TAV GALLERY, 東京

 

主な受賞歴
2015 ターナーアワード2015 優秀賞
2016 JAGDA学生グランプリ2016 入選
2021 CAF賞2021 海外渡航費授与

 


 492102072618, 2022, 420x297mm,UV printing on acrylic board: “About Validity” Group Show. Curated by KUROTAKI Kiyoshi

 

Dynamite #1, 2023, 515x728mm, Gum on panel : “Chewing/Tuning” Solo Show