彦坂尚嘉「切断芸術展 “Disconnection”」[ 4/9 (sun) – 4/30 (sun) ]


 

 

ポスト真実を切断する70年代以降のコンセプチュアリズムを主導したアーティスト、彦坂尚嘉によるキュレーション企画「切断芸術展”Disconnection”」を、4月9日(日)から430日(日)まで開催します。

 

切断芸術において、主に“切断”は三つの意味((1)時代の傾向としての切断 (2) 芸術の制作方法としての切断 (3)繋がりを立つ技術としての切断)を指し、反グローバリズムにより変化を遂げる芸術の現在あるべき形を、彦坂尚嘉を中心に中川晋介、ヴァンだ一成、 生須芳英の計4名が提示します。

 

彦坂尚嘉は1946年東京生まれ、1967年に多摩美術大学油彩科に入学、学園紛争の嵐が吹き荒れた69年、掘浩哉らとともに「美術家共闘会議」(美共闘)を結成し政治闘争を行い、1970年には政治から離れ、美術表現の制度性そのものを批判する新たな闘争を開始し、現在に至ります。本展ではウッドペインティングを出展。

3D映像作家である中川晋介は1980年京都生まれ、武蔵美術大学空間演出デザイン卒業、3D映像とAR(拡張現実)を駆使した無数のコンセプチュアル・アートを発表し、現在に至ります。本展では切断3Dアニメーションを出展。

ペインターであるヴァンだー一成は1989年東京生まれ、東北芸術工科大学卒業、絵本を”切断”し、再配置することにより絵本に対する先入観とコンテクストを破壊するアーティストです。本展では切断絵本絵画を出展。

生須芳英は1991年群馬県生まれ、多摩美術大学造形表現学科中退、音響詩人と自明し無数の企画展に精力的に参加するアーティストです。本展では切断芸術と対概念となる結合芸術の新シリーズを出展。

尚、本展に寄せて「アートの転機とドナルド・トランプ」と題した論考にて、彦坂尚嘉は、下記のように述べています。

 

「美術史というのは、政治や軍事が変貌すると変わるのである。第一次世界大戦が始まると、ダダや、キリコの形而上絵画が出現した。
日本では、大日本帝国が1945年に敗戦をすると、日本画が大きく変貌したのである。絵の具までが、まるで油絵のようなゴツゴツしたものにかわった。ルネッサンスの美術もそうだが、政治軍事が不安定化すると、ミケランジェロの美術はバロック化を始めた。」

 

誕生70周年を迎え尚、飛躍を続ける彦坂尚嘉と気鋭の若手作家、中川晋介、ヴァンだ一成、 生須芳英の計四名が作る、時代に即した新しい企画展「切断芸術展 “Disconnection”」に是非、ご注目ください。

 

TAV GALLERY STAFF

 


 

アーティストプロフィール

 

 
彦坂 尚嘉(ひこさか なおよし)

1946年 東京都世田谷区生まれ
1962年 東京都立駒場高等学校入学。
1969年 宮本隆司、石内都、刀根康尚、堀浩哉らと美術家共闘会議(美共闘 BIKYOTO)結成に参加。
1970年 多摩美術大学絵画科を中退。
1975年 第9回パリ青年ビエンナーレ(フランス)
1982〜1983年 文化庁在外研修員としてフィラデルフィア大学院グラデュエイトスクール・オブ・ファインアーツに特別生として留学。
1982年 第40回ヴェネツィア・ビエンナーレ(イタリア)
1987年 第19回サンパウロ国際ビエンナーレ(ブラジル)
1988年 オリンピアード・オブ・アート(韓国現代美術館、ソウル)
1989年 ユーロパリア・ジャパン(ゲント美術館、ベルギー)
1999年 グローバル・コンセプチュアリズム展(クイーンズ美術館、ニューヨーク)
2000〜2009年 第1回〜4回越後妻有トリエンナーレ
2001年 センチュリー・シティ展(テート・モダン、ロンドン)
2005年 リュブリアナ国際版画ビエンナーレ(リュブリアナ美術館、スベロニア)
2007年 リスボン建築トリエンナーレ(ポルトガル)
2008年 こんぴらアート2008(四国、琴平)
2009年 立教大学大学院特任教授に就任。
2013年 あいちトリエンナーレ2013(愛知県立美術館)
2015年 逆三角関係展(第01,03,05,07,09回 竹林閣 東京新宿)
              彦坂尚嘉+A.ACL のノイズ音楽会(東京新宿 喫茶茶会記)
2016年 逆三角関係展(第11,13,15,18,20,22,24,28,30回 竹林閣 東京新宿)
            第16回逆三角関係展 彦坂尚嘉 落選エンブレム展(竹林閣 東京新宿)
2017年 切断芸術展(第01,02,03回 竹林閣 東京新宿)

 

 


中川 晋介(なかがわ しんすけ)

1980年 京都生まれ
2004年 武蔵野美術大学 造形学部空間演出デザイン学科卒業
2004年 年間日本の空間デザイン2004 奨励賞
2003年 第28回新日本写真協会展 入賞 solo exibition
2014年 彦坂尚嘉企画:GHANA 中川晋介展(神奈川 前衛実験NETART)
2009年 New Test Tube #1 中川晋介展 Tin Bird (東京 深川Labo)
exibition 2007. 木曜のアクビ展 (東京 Roof)

2008年 メクルーフ展 (東京 Roof)
2008年 GEISAI ミュージアム#2
2009年 GEISAI #12 2010 「フリーアート」第1回展(神奈川 気体分子ギャラリー)
2011年 anima/t/ron(東京六本木 SuperDeluxe)
2011年 オソトデアニメーション(東京 上野恩賜公園野外ステージ)
2011年【アート・アニメーションのちいさな学校作品上映】(名古屋 アートラボあいち)
2011年 インターカレッジアニメーションフェスティバル(iCAF)(金沢 金沢21世紀美術館/京都 京都国際 Manga Museum/東京六本木 国立新美術館)

2011年『新港村』建築系ラジオブース「建築系美術ラジオ展」 (横浜 新港村)
2011年 大木裕之企画『上映、ライブ、演劇、トークイベント』(高知 高知県立美術館ホール)
2011年 彦坂尚嘉企画:画像建築展(東京 マキイマサルファインアーツ)
2014年 GHANA 中川晋介展(神奈川 前衛実験NETART)
2014年 オソトデアニメーション2014(東京上野 上野恩賜公園野外ステージ)
2014年 TOKYO DOYA LAND 2014(東京 アート・アニメーションのちいさな学校 地下劇場)
2015年 ものづくり展@muguest feerique(表参道 Future SEVEN)
2015年 彦坂尚嘉企画:逆三角関係展Vol.4(東京新宿 竹林閣)
2015年 江古田ユニバース2015(東京江古田 ギャラリー古藤)
2015年 彦坂尚嘉+A.ACL のノイズ音楽会(東京新宿 喫茶茶会記)
2016年 彦坂尚嘉企画:逆三角関係展Vol.14、Vol.25(東京新宿 竹林閣)
2016年 彦坂尚嘉企画:第1回第2回切断芸術展(東京新宿 竹林閣)
2016年 オソトデアニメーション2016(東京上野 上野恩賜公園野外ステージ)

 

 


ヴァンだ一成 (ゔぁんだ いっせい)

1989年  東京都生まれ
2013年  個展 (前衛実験NETART)
2014年  角田塾 グループ展「MODERNISTS FROM OUTER SPACE」(Gallery NIW)
2014年  角田塾 グループ展「POST HUMAN」ウィークリーマンション)
2015年  彦坂尚嘉企画:逆三角関係展 第02,04,06,08回(新宿 竹林閣 三人展)
大木裕之企画:超 たまたま 13th (小金井アートスポットシャトー2F)

2016年  彦坂尚嘉企画:逆三角関係展 第10,12,14,17,19,21,23,25,27,29,31回 (新宿 竹林閣 三人展)
2017年  彦坂尚嘉企画:切断芸術展(第01,02,03回 竹林閣 東京新宿)

 

 


生須 芳英(なます よしひで)

1991年 群馬県生まれ
2013年 個展(前衛実験NETART) 『高濃度汚染水RECORDS』で音楽の発表
2014年 高濃度汚染水RECORDS展(早稲田あかね)
2015年 彦坂尚嘉企画:逆三角関係展 第02,04,06,08回(新宿 竹林閣 三人展)
2015年 大木裕之企画:超 たまたま 13th(小金井アートスポットシャトー2F)
2016年 Art’s Birthday from Tokyo—Multi-Action(Art Lab TOKYO)
2016年 彦坂尚嘉企画:逆三角関係展 第10,12,14,17,19,21,23,25,27,29,31回 (新宿 竹林閣 三人展)
2017年 彦坂尚嘉企画:切断芸術展(第01,02,03回 竹林閣 東京新宿)

 

 


 

開催概要

名称 : 彦坂尚嘉「切断芸術展 “Disconnection”」
会期 : 2017年4月9日(日)- 4月30日(日)
会場 : TAV GALLERY(東京都杉並区阿佐谷北1-31-2)[03-3330-6881]
時間 : 13:00 – 20:00
休廊 : 水曜、木曜

出展 : 彦坂尚嘉、中川晋介、ヴァンだ一成、生須芳英

Opening Party : 4月9日(金)18:00 – 20:00

 



本展に寄せて

 

アートの転換とドナルド・トランプ
彦坂尚嘉

 

美術大学で、新しいアートを教えてくれるのだろうか?

新しいというのは、奈良美智や村上隆、会田誠、さらには森村泰昌などの『新ジャポニズム』のアーティストよりも新しいアートの事である。

こういう『新ジャポニズム』が出て来たのは、1986年頃からである。その時から美術が商業主義化したのだ。その大きな切っ掛けは、イギリスの広告代理店である「サーチ・アンド・サーチ」(Saatchi & Saatchi)の創業者チャールズ・サーチが、自分のコレクションを展示するギャラリーを開設したことである。そのサーチが、自国のまだ世に知られていない若い美術家の作品を安値で収集する路線をとった。その頃の若いアーティストは、廃工場や廃倉庫で自主運営するギャラリーを開設していた。サーチは、そういう若い自主的な活動をするアーティストに注目して、安く買っていったのである。

一方日本の方は1986年くらいから経済がバブル化して好景気でそのなかから森村泰昌や、宮島達男などの新しいアーティストが、国際的にデビューし始める。この新しい動きを見ていたのが村上隆であった。1989年にベルリンの壁が崩壊するのだが、この年に最初の個展を開いたのが、村上であった。さらに2年後の1991年に二度目の個展を開いたときに、ソビエトが崩壊して、それまでの米ソが対決していた冷戦時代が終わった。このポスト冷戦時代こそが、グローバリゼーションの時代で、村上隆は、このグローバリゼーションの新しい時代の波に乗ったである。

さて、今日は、この25年続いたグローバリゼーションの時代が終わったのである。それを象徴するのが、一つはイギリスが国民投票をして、ポピュリズムの波に飲み込まれて、EUからの離脱を決めたことである。さらにアメリカ合衆国の大統領選挙で、本命であったヒラリー・クリントンが敗北して、ドナルド・トランプが勝って、反グローバリゼーションを主張したことである。つまり経済の方向を国際化するのではなくて、アメリカを守る保護主義に舵をきったのである。
こういう変化が美術を変えるのだろうか?

 

確実に変える!!

 

美術史というのは、政治や軍事が変貌すると変わるのである。第一次世界大戦が始まると、ダダや、キリコの形而上絵画が出現した。
日本では、大日本帝国が1945年に敗戦をすると、日本画が大きく変貌したのである。絵の具までが、まるで油絵のようなゴツゴツしたものにかわった。ルネッサンスの美術もそうだが、政治軍事が不安定化すると、ミケランジェロの美術はバロック化を始めた。
トランプ大統領は、今までのオバマの政治のようなリベラル(自由)でインテレクチャリズム(知的)の政治を否定して、土着的で頭の悪い政治を目指し始めたのである。そこには大きな切断がある。アメリカが二つに割られて、民主党と共和党が、もはや会話もできないような対立の社会になったのである。

 

美術も同様に《切断》の時代になる。英語で言うとCUTではなくて、ディスコネクション(disconnection)である。ディスコネクションというのは、美容室でも使われる言葉だが「パートごとに長さを変えていくこと。つながりを断つ(つながりを無くす)カット技術」を言う。
と言うわけで、芸術ではない頭の悪い作品を作るのである。わざわざ作らないで、レディメイドのものでも良いのだが、芸術ではないものをつくる。そして切って、左右を入れ替えて、つながりを断つ(つながりを無くす)制作をすると、あら不思議、《芸術》になるのである。バカでも作れる芸術である。

 

これは子供から大人になるような変化である。成人式の時に、ユダヤ教や、イスラム教では、オチンチンを切って割礼をする。割礼というのは包茎手術だ。つまり芸術ではないデザイン品や、工芸品を切断して、つながりを断つ(つながりを無くす)制作をすると、割礼をしたかのように子供から大人になって、つまり《芸術》になるのである

 

まあ、誰も信じないだろうが、そういう実験をして、芸術運動として制作をしているアーティストの展覧会が、今回の『切断芸術展”Disconnection”』である。だまされたと思って、見に来てみて欲しい。
この芸術運動は、6月25日(日)から7月7日(金)まで、東京都美術館の彫刻室の大空間でも、18人のメンバーで開催される。

 

2017/03/05(ひこさかなおよし)

 


 

本展に寄せて 2

 

なぜに、ドナルド・トランプなのか?
彦坂尚嘉

 

アメリカ大統領の初代は、誰でも知っているようにジョージ・ワシントンです。

1779年、ワシントンは、ニューイングランドのイロコイ族への攻撃命令を下しています。「村落すべてを破壊し、根絶やしにするように。同国を単に制圧するだけでなく、絶滅させるのだ。」私はこの残虐なワシントンの人格に興味を持って、「言語判定法」という方法で、彼の肖像画を分析をしました。彼は《現実界》だけの単界の人格でした。

さて、私はヒラリー・クリントンの人格にも興味を持って、彼女の肖像写真を見て、分析をしました。彼女は、《想像界》《象徴界》《現実界》《サントーム》の4界がある人格を持っていました。

最後が、現在のアメリカ大統領のドナルド・トランプです。非常に表情の豊かな人物です。「言語判定法」で分析をすると、《想像界》《象徴界》《現実界》《サントーム》《ディープミステリ》《ノーネイム》《越境》《未知》《その先》《死》の10界がある人格でした。  トランプ大統領は、アメリカ史上、初めての10界ある大統領です。

さて、人類史の中で、おそらく最初の10界ある人物はフロイトです。フロイトは、1900年に『夢判断』を書いて、人間の無意識の存在を指摘しました。  トランプ大統領というのは、10界ある、極めて無意識の存在を表出する暴君タイプの大統領と言えます。

 

では、無意識とは何か? 通常の意識には《検閲》が働いていて、社会通念に合わせて《抑圧》されたものが無意識を形成する。社会的常識というのは無限の連鎖であって、それは《模様》のように反復して連鎖して、社会を覆い隠している。

 

つまり無意識を隠しているものが《模様》です。この作品は、切断芸術でありまして、《模様》に微妙な差異を作って、切断してあって、切断性を持った模様という普段は無いものになっています。左右で大きさが違うのです。この《模様》の切断されたスリッツから、アメリカの無意識を体現したトランプの顔が登場しています。

 

2017/04/06(ひこさかなおよし)

 


 

A Change in Art and Donald Trump

Hikosaka Naoyoshi

 

Do art schools teach “new art”? By “new art” I mean artists newer than Nara Yoshitomo, Murakami Takashi, and Aida Makoto, as well as Morimura Yasumata. In brief, newer than “neo-Japonisme.”

“Neo-Japonisme” emerged around 1986, when art became increasingly commercialized. A major impetus came from Charles Saatchi, the founder of the British advertising agency Saatchi & Saatchi, who opened a gallery to show his collections. He formed his collections by buying unknown British artists at low prices. In particular, he paid attention to those young artists who ran their own galleries in abandoned factories and warehouses.

Meanwhile, from around 1986, as Japan enjoyed the bubble economy, such new artists as Morimura Yasumasa and Miyajima Tatsuo successfully debuted in the international art scenes. Murakami Takashi Murakami, who recognized their successes, had his first solo exhibition in 1989, the year the Berlin wall collapsed. Two years later, in 1991, when Murakami had his second solo exhibition, the Soviet Union, too, collapsed, ending the long Cold War between the U.S. and the U.S.S.R. It is during this post-Cold War era that Murakami rode on the new wave of globalization.

Today, after a quarter century, the era of globalization is over. The most salient sign of this change is the so-called Brexit and the triumphant of populism: the people of the U.K. voted for the departure from EU. Furthermore, in the U.S. presidential election, Donald Trump won over the favorite Hillary Clinton, holding the banner of anti-globalization. That is to say, he shifted the gear from the economic internationalism to the protectionist America First-ism.

Will such a shift change art? It sure does.

Art history saw a major change in tandem with that in political and military affairs.

When World War I broke, Dada and de Chiriko’s metaphysical painting arose.

In Japan, when the Japanese empire was defeated in 1945, Nihonga (Japanese-style painting) underwent a significant transformation. Even the material used in Nihonga changed, with its smooth surface turning into rough one like oil painting. In the case of Renaissance art, when the political and military situation became volatile, Michelangelo’s art began to show a Baroque tendency.

President Trump rejected liberalism and intellectualism, that characterized Obama’s presidency in favor of nativism and dumb-ism. There lies a major disconnect. American society was broken into two, and the Republicans and the Democrats can no longer have a dialogue.

In art, too, it is now an age of setsudan, or “disconnect.”

Therefore, I hereby declare setsudan art that is not art but dumb. We may not have to make it, but a readymade object will do. Either way, our goal is that which is not art. Then, we cut them into two and transpose the left and right parts. In other words, we create a “disconnect.” And voila! The strange thing happens. What we have is “art.” Even a dummy can make such art.

 This is a transformation akin to a child becoming an adult. In Judaism and Islam, Muslim, a boy becomes an adult with circumcision. “Cutting” a design or craft object that is no art to introduce “disconnect” (sever the tie) helps, like circumcision, non-art (a child) to become art (an adult).

Perhaps, nobody will believe what I say, but eighteen artists who conduct this experiment as an art movement will hold Setsudan Art Exhibition: Playing Trump. Please come and see. What do you have to lose?

Dates: June 25 (Sunday) to July 7 (Friday)

Venue: Sculpture Room, Tokyo Metropolitan Art Museum

(March 5, 2017)