坂爪康太郎個展「BLINKERS -Altar Garden-」 [ 4/17 (Fri) – 5/10 (Sun) ]

POOL SIDE GALLERYでは、坂爪康太郎による個展「BLINKERS – Altar Garden -」を開催いたします。坂爪康太郎は、ろくろ成形を基盤とした陶による立体制作を通じて、《BLINKERS》と呼ばれる仮想生命体/仮面/器的存在のシリーズを継続的に展開してきました。《BLINKERS》は、目や口腔を想起させる開口部と、身体器官を思わせる有機的な膨らみを持ちながらも、特定の生物学的参照へと還元されることを拒む新たな陶芸作品です。
本展の副題である 「Altar Garden(祭壇庭園)」 は、相反する二つの空間概念を接続します。祭壇とは、本来、超越的な存在との交信や供犠のために構成される、象徴秩序の中心的装置です。一方で庭園とは、自然を制御しながらも完全には統御しきれないものとして配置する、半ば人工的で半ば偶発的な環境を指します。坂爪はこの二項を重ね合わせることで、崇高性と親密性、儀礼性と遊戯性、信仰と愛玩のあいだにある曖昧な地帯を、展示空間そのものとして構成しようとしています。
今回の展示では、人工芝が敷かれた空間に複数の《BLINKERS》が配置され、来場者はそれらを単なる鑑賞対象としてではなく、実際に作品に触れられる / 育成するインタラクションを介して、Blinkersの世界観を共有します。
《BLINKERS》は、どこかで「顔」に見えてしまうことで、見る者の内部にあるシュミラクラ的な知覚回路を起動させます。しかし同時に、その表情は常に未確定であり、感情移入の対象であることを引き受けながら、その読み取りを決して安定させません。つまり《BLINKERS》は、私たちが他者性をいかに認識し、いかに誤認し、いかに愛着を付与するのかという、きわめて原初的な認知の運動を引き出す一方で、その運動自体を宙吊りにするのです。この宙吊りの状態は、坂爪の造形がもつ中空性によってさらに強調されます。
陶という素材は、一般に内部を包摂する「器」の論理と、外部へ形象を提示する「彫刻」の論理のあいだに位置づけられてきました。《BLINKERS》はその両義性を引き受けつつ、内部/外部、表/裏、身体/仮面といった区分を滑らかに横断します。そこにある空洞は、欠如としてではなく、意味や主体が一義的に定着することを回避するための構造的な余白として機能していると言えます。この点において本展は、工芸的身体性とポストインターネット以後の視覚文化が交差する地点にも位置しています。坂爪の造形は明らかに手仕事に支えられており、その量感、回転体としての均衡、焼成を経た表面の緊張には、陶芸の歴史的蓄積が刻まれています。しかし一方で、《BLINKERS》が喚起するのは、民藝的な用の美や伝統的な器物性ではなく、むしろ現代における「愛着」「擬似生命」「インターフェース化された他者」といった感覚の政治学です。そこではもはや「工芸」は、手仕事の真正性を保証する保守的カテゴリーではなく、未知の存在と関係を取り結ぶための、きわめて現代的なプロトコルとして再解釈されます。
九谷焼をはじめとする工芸文化の厚い地盤を持つ金沢において、この展示が示唆するのは、陶が依然として「器」や「伝統」の枠内に留まる必要はないこと──むしろ坂爪は、陶という最も古いメディウムのひとつを用いながら、そこに生態系、祭祀、ペット性、彫刻、仮面、インスタレーション、インタラクションといった複数のレイヤーを重ね合わせることで、工芸と現代美術のあいだに新たな通路を開こうとしています。
当展の「Altar Garden」は、それは、何かが祀られつつ、同時に何かが飼われてもいるような、制度化される以前の関係性が仮設される場です。本展は、坂爪康太郎による《BLINKERS》の新たな展開であると同時に、私たちがいかなる存在に対して「生命」や「親密さ」を見出しうるのか、そしてその感覚がいかなる制度や欲望によって編成されているのかを問い返す試みでもあります。皆様のご来場を、お待ちしております。
佐藤栄祐
開催概要
名称 : 坂爪康太郎個展「BLINKERS -Altar Garden-」
会期 : 2026年4月17日 (金) – 5月10日 (日)
会場 : POOL SIDE GALLERY( 〒920-0962 石川県金沢市広坂1丁目2−32 2F)[080-1231-1112]
時間 : 12:00 – 18:00
休廊 : 月、火、水
企画 : TAV GALLERY
坂爪康太郎 / Kotaro Sakazume
1988年 東京都生まれ
2012年 武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科陶磁専攻卒業
主な個展
2026 「BLINKERS -Altar Garden-」POOL SIDE GALLERY, 石川
2024 「BLINKERS -Morphogenesis」TAV GALLERY, 東京
2017 「野生の思考」dish tokyo gastoronomy caffe, 東京
グループ展
2023 「アルカイの空-Sky of the beginning」TAV GALLERY
2023 「INTERVERSE」SOM gallery
2022 「CERAMIX」西武渋谷美術画廊
2021 「加彩婦女俑に魅せられて」大阪市立東洋陶磁美術館
2018 「puzz-le」FARO Kagurazaka
2016 「morning star#01」NANZUKA
2015 「シブヤスタイル vol.9 」西武渋谷美術画廊
アートフェア
2024 「artKYOTO 2024」京都
2023 「Meet Your Art Festival 2023」東京
パブリック・コレクション
2021 rope pattern face/MAKオーストリア応用美術博物館
web : https://www.instagram.com/kotarosakazume/



