オートモアイ 個展「開け放たれた扉の向こうに海が見える」[ 1/9 (Fri) – 1/31 (Sat) ]

この度、TAV GALLERYでは3度目の個展となるアーティスト・オートモアイによる新作を中心とした個展「開け放たれた扉の向こうに海が見える」を、2026年1月9日から1月31日まで開催する。オートモアイは一貫して、「語られなかったもの」あるいは「語ることが制度的に留保されてきたもの」の周縁に立ち続けてきた。それは匿名性であり、名付け以前の身体であり、記憶の再編成過程において脱落した時間や経験である。本展「開け放たれた扉の向こうに海が見える」は、人間の記憶構造に内在する不確実性と、その欠落を補完するために生成される〈物語〉の作用を、表象と認知の関係から検討する試みである。
記憶は決して中立的な保存装置ではなく、時間的距離、感情的負荷、他者との関係性によって常に歪められ、断片化され、再構成され続ける。私たちが想起する「過去」とは、事実の総体ではなく、認知的に編集された物語的構造に他ならない。オートモアイの描く人物像——顔を欠いた身体、輪郭のみを残す存在、あるいは空間の中に配置された〈不在〉——は、近代的主体概念に基づく単一で一貫した自己像を明確に拒否する。they という人称が示すように、オートモアイ自身もまた、固定されたアイデンティティではなく、関係性と文脈によって可変的に立ち上がる複数的な存在として自己を位置づけている。
展覧会タイトルに示された「開け放たれた扉の向こうに広がる海」は、逃避や希望といった情緒的比喩に回収される以前に、記憶が意味へと編成される前段階——すなわち、未分化で流動的な経験の場を指し示しており、室内と屋外、生と死、私的な経験と共有不可能な感覚といった二項対立は、作品空間の中で明確に区切られることなく、相互に侵食し合いながら併存している。本展で提示されるのは、言語化可能な領域と言語化不可能な領域のあいだに存在する、その境界面そのものである。
不可視の経験がどのように個人的な意味を獲得し、やがて物語として再編成されるのか。そのプロセスは説明的に提示されるのではなく、鑑賞者自身の知覚と記憶の働きを通じて、追体験される構造として立ち現れる。オートモアイの作品は、明確な結論や物語の完結を志向しない。むしろ、扉が開いたままの状態——過去と現在、自己と他者、記憶と想像のあいだに生じる宙吊りの時間——を持続させることに重心が置かれている。海は確かにそこに見えている。しかし、それに辿り着いたのか、あるいは未だ室内に留まっているのかは、最後まで確定されることはないだろう。本展は、この不確定性そのものを制度化された展示空間の中に留め、ひとつの経験として提示する試みである。
佐藤栄祐
名称 : オートモアイ 個展「開け放たれた扉の向こうに海が見える」
会期 : 2026年1月9日 (金) – 1月31日 (土)
会場 : TAV GALLERY(東京都港区西麻布2-7-5 ハウス西麻布4F)[080-1231-1112]
時間 : 13:00 – 19:00
休廊 : 日、月
レセプションパーティー : 2026年1月9日 (金) 19:00-21:00
オートモアイ / AUTOMOAI
2015年からモノクロでの作品の制作を開始、2018年からはカラーも多用し、匿名性の高い“存在”が画面に佇んでいるような 作風で知られる。極めて客観的でもありながら、とてもパーソナルな情景にも見えてくるその作風は、人間同士の関係性や、作品と鑑賞者の関係性など、必要な情報が削ぎ落とされているからこそ見えてくる景色と情景を提示する。
https://www.instagram.com/auto_moai/?hl=ja



