「ノンヒューマン・コントロール」[ 9/12 (sat) – 10/4 (sun) ]


 

 

TAV GALLERYにて、9月12日 (土) から10月4日 (日) まで、企画展「ノンヒューマン・コントロール」を開催します。本展は、人間と非人間の関係性を模索する「ノンヒューマン」を主題として、生態や環境への人間の介入の肯定的な可能性を示します。

参加作家は、動植物から工業製品までを組み合わせた立体作品を手がける荒木由香里、アーティストとして粘菌と人間が協働してプレイするボードゲームの研究活動などをおこなう齋藤帆奈、水・生物・植物が循環しつづけるインスタレーションなどを制作する渡辺志桜里の3名となります。

本展への着想は、「植物園のような自然はない」という気づきにある。植物園とは都市がつくりだした人工自然であり、人間は、人工の象徴である都市において、ノンヒューマン= (人間ならざるもの) を資源や機能として利用してきた。このような人間が行為者となって生みだす文化を、その生態と環境への介入も含めて、ポジティブに示したいと考えた。

ノンヒューマンという思想のラディカルな視点は、従来は鑑みられることの乏しかった、よりミクロな生態や環境、歴史という射程さえも捉えたことにあり、いまこのときにおいては思弁的な潮流とも言えるが、この先のあり方を想像するならば、それは、共生という相互扶助の指標として、未来への問いでなく、同時代への提案として浮かび上がるのではないか。

そして、集権的ではない異なる過剰さを示すこと、それが芸術実践であることの重要な特性だと信じる。こうした思考を深めるにあたっては、マレイ・ブクチンのエコロジーの問題は社会の問題であるという視点、また、芸術実践にあったっては近年の傾向である、ダナ・ハラウェイを系譜したニューマテリアリズムの文脈から示唆を受けている。

自然と文化をわけて、人間の手が入っていないものを純粋な自然だとみなす場合、人間がなにかをつくることに対する否定へと向かっていく、そういった方向ではなく、介入や制作は肯定し、そこに複数性を認めること。本展が提示すのは、人間と非人間の共生の態度として、3名の作家が活動主体として選びとったポジティブな相互扶助の世界像、その過剰さである。

 

西田編集長  (TAV GALLERY Manager)

 



開催概要


名称 : ノンヒューマン・コントロール
会期 : 2020年9月12日 (土) – 10月4日 (日)
会場 : TAV GALLERY (東京都杉並区阿佐谷北1-31-2) [03-3330-6881]
時間 : 13:00 – 20:00
休廊 : 水曜、 木曜

出展作家 : 荒木由香里、 齋藤帆奈、 渡辺志桜里

企画・キュレーション : 西田編集長

協力 : AIN SOPH DISPATCH

主催 : 一般社団法人TAV

 



出展作家プロフィール

 

荒木由香里  ARAKI Yukari

アーティスト。1983年、三重県生まれ。2005年、名古屋芸術大学美術学部造形科造形選択コース卒業。2006年、同研究生修了。2010年より同系色の素材を集積させる手法での制作を開始し、動植物から工業製品までを無差別に組み合わせる立体作品やインスタレーション作品などを発表。主な展覧会に、「昼間の星」(佐久島、 愛知、 2019)、個展「眼差しの重力」(LOKO GALLERY、 東京、 2016)、「WABI SABI SHIMA」(H18gallery、 ブリュッセル、 2015)、個展「APMoA Project ARCH 何ものでもある何でもないもの」(愛知県美術館、 愛知、 2012) など。

yukariaraki.com

齋藤帆奈  SAITO Hanna

アーティスト。研究者。1988年生まれ。多摩美術大学工芸学科ガラスコースを卒業後、metaPhorest (biological/biomedia art platform) に参加。2019年より東京大学大学院学際情報学府修士課程 (筧康明研究室) に在籍。理化学ガラスの制作技法によるガラス造形や、生物、有機物、画像解析等を用いて作品を制作しつつ、研究活動も行う。主なテーマは、自然/社会、人間/非人間の区分を再考すること、表現者と表現対象の不可分性。主な展覧会に、「WRO メディア・アートフェスティバル」(ポーランド ヴロツワフ、 2019)、「Tsukuba Science Art Exhibition」(さくら民家園、 茨城、 2019)、主な受賞に、第21回 学生CGコンテスト ノミネート (“Senses of Light” 花形慎、角谷啓太との共同制作作品、 2017)、art hack day「生命体としてのテクノロジー」審査員賞 (落合陽一賞) 受賞 (“sensors, muscles, circles”、 2016) など。

hannasaito.com

渡辺志桜里  WATANABE Shiori

アーティスト。彫刻家。1984年、東京都生まれ。2008年、中央大学文学部仏文学専攻卒業。2015年、東京芸術大学美術学部彫刻科卒業。2017年、東京芸術大学大学院修了。全体性を主軸に、個々が集合した現象と、その個に携わる身体の境界といったものに焦点を当てて制作。主な展覧会に、「Dyadic Stem」(The 5th Floor、 東京、 2020)、「Lenguaje Alterno」(RÜIDO Proyectos Mexico、 メキシコ、 2019)、「東京の桜」(TOKYO CITY VIEW、 東京、 2018)、「茨城県北芸術祭」(茨城県大子町初原小学校、 茨城、 2017)、「INTERNAZIONALE DI SCULTURA」(イタリア フロジノネ、 2016) など。

shiori-watanabe-artworks.com

 



Exhibition Critique

 

── “ポスト資本主義は「新しい」ということを特権としない” | Text by 卯城竜太 (Chim↑Pom) | 美術手帖

https://bijutsutecho.com/magazine/insight/22981

 

── “「非人間」と共生するふたつの作品から見える、差別に対抗する手段とは” | Text by 佐々木ののか | QJWeb

https://qjweb.jp/journal/43695/

 



Installation views

 

Exhibition scenery : “Non-Human Control” Group Show

 

Exhibition scenery : “Non-Human Control” Group Show

 

Exhibition scenery : “Non-Human Control” Group Show

 

荒木由香里 ARAKI Yukari《White》2013, mixed media、 H58.5 × W22 × D19 cm──左
荒木由香里 ARAKI Yukari《White》2013,  mixed media、 H67 × W27 × D20 cm──中
荒木由香里 ARAKI Yukari《White》2013,  mixed media、 H70 × W22 × D14 cm──右

 

荒木由香里 ARAKI Yukari《White》2018, mixed media, H56.6 × W23 × D25 cm

 

荒木由香里 ARAKI Yukari《Black》2011, mixed media, H210 × W35 × D40 cm

 

齋藤帆奈 SAITO Hanna《食べられた色 / aten Colors》2020, 粘菌, 食用色素, オートミール, 寒天培地, アクリル, H15 × W15 × D5 cm

食用色素に染められた食物を粘菌が食べ、自身の身体で色を運び、広げていく。(Text by SAITO Hanna)

 

齋藤帆奈 SAITO Hanna《ある生命の物語 / Story of lifes》2020, Video 47 sec, マーメイド紙にインクジェットプリント [H19 cm × W19 cm (5 set) ],  寒天培地, オートミール, 粘菌 / 協力 : 筧康明研究室 (東京大学大学院情報学環)

2種類の粘菌と人間のプレイヤー2名が行うボードゲームの、ある1ゲームのアーカイブ。コマは粘菌の餌のオートミールで作られている。プレイヤーは1日に1手コマの場所を決める。自陣から自陣に自分の粘菌で先に線を引いたプレイヤーの勝ち。(Text by SAITO Hanna)

 

齋藤帆奈 SAITO Hanna 《Nature-Culture Stratum》2020, 砂利, 土, ジェリービーンズ, ドロップス等, H29.7 × W42.0 × D3.5 cm

人間の気を引くためにカラフルに染められたお菓子はじょじょに土に溶けこむだろう。それは後に微生物たちの栄養源となっていくのか、あるいは濃度の高すぎる糖分によって周囲の生物を殺すことになるのだろうか。(Text by SAITO Hanna)

 

齋藤帆奈 SAITO Hanna《整えられたアクターたち / Arranged actors》2020, 砂利, ガラス, 高分子ゲルビーズ, 水, 粘菌, H200 × W72 × D6 cm

未来のボーリング調査は人工物で構成された地層をサンプリングするのだろうか。(Text by SAITO Hanna)

 

Exhibition scenery : 渡辺志桜里 WATANABE Shiori of “Non-Human Control” Group Show

 

渡辺志桜里 WATANABE Shiori《Green block Yellow block》2020, ガラス, LEDライト, みじんこ, 緑藻, H23 × W150 × D20 cm / Photography by TAV GALLERY

緑と黄色の直方体はそれぞれ水に生息する緑藻とみじんこで満たされています。緑藻はみじんこの餌になり、みじんこは小魚の餌になり、果てしない循環がなされるわけですが、水の中では一緒くたに存在するそれぞれを種と言うカテゴリーで分け、個体の持つ色彩を抽出した。(Text by WATANABE Shiori)

 

渡辺志桜里 WATANABE Shiori《Sans room》2020, ガラス, LEDライト, 野菜, 金魚, ホース, アクリルパイプ, エーハイムポンプ, 溶岩, 可変 / Photography by TAV GALLERY

サンルームは、⿂と植物、そして微⽣物の循環による⼈⼯的なシステムです。太陽のSunとフランス語で⾎を意味するsang、そして不在を表すsansに象徴された⽔耕栽培の野菜と⿂の⽔槽、そして⼀⾒意味のないオブジェ達をチューブで繋げ、⽔を循環させています。このシステムは基本的には⽔槽の⽔の中の⿂の排泄物が植物の肥料となり、植物は⽔を浄化させ⿂の⽔槽へと還る構造になっていますが、様々なものと接続が可能です。システムが接続状態にある時他の⽣物やオブジェと絶妙なバランスの依存関係を築くことになります。(Text by WATANABE Shiori)

 

渡辺志桜里 WATANABE Shiori《lost wax1》2017, 石, 蝋, 紙, H10 × W15 × D10 cm──上左
渡辺志桜里 WATANABE Shiori《lost wax2》2017, 石, 蝋, 紙, H15 × W30 × D20 cm──上右
渡辺志桜里 WATANABE Shiori《lost wax3》2018, 石, 蝋, 紙, H20 × W30 × D20 cm──下

切った⽯の両⽅の断⾯をスキャンし両⾯コピーすることで、⼆つに割った⽯と⽯との間の記憶が出⼒される。このデータによってこの記憶のコピーは永遠に引き延ばすことが可能になる。(Text by WATANABE Shiori)

 


Courtesy by TAV GALLERY / (Except for a few) All Photography by SAKAI Toru