95年画廊 拡張展「 ≠(not equal)」[ 10/17 (sat) – 10/25 (sun) ]
「1995年生まれのアーティストのみを扱う画廊」というコンセプトを掲げ、現在において最も新進気鋭という言葉がふさわしいと断言できるアーティスト・コレクティブ「95年画廊」による企画展「95年画廊 拡張展「 ≠(not equal)」」を、10月17日 (土) から10月25日 (日) まで開催します。
本展には、「時代を破壊するものは誰か」という、強烈な煽り文が付与されており、この言葉がそのまま意味する通り、1995年に生まれた新たなる作家たちが、この停滞した2015年という時代を「破壊する」ことを目的としています(言わずもがな、この煽り文は、岡本太郎現代芸術賞の「時代を創造する者は誰か」に呼応)。
開催にあたって、「95年画廊」を主催する吾妻吟は、本展ステートメントのなかで、何故、いまこの展示を行わなければならないのか、その意義について、次のように語っています。
「サリンと震災の空気の中に生まれ、欺瞞の教育に戸惑い、青春のただ中に震災が猛威を振るう。こんな世代のアーティストは、いったいどんな作品を作り、何を求め、何に怒り、これから何をするつもりなのか……。2015年は、1995年生まれの作家が20歳になる年であり……この年に、1995年生まれとして、何らかのアクションを起こさなければ、というある種の使命感に駆られました。私が95年画廊に望む、最終的な展望は……この停滞した時代にブレイクスルーを巻き起こすことです。それは大きな革命である必要はありません。蝶が起こす程度の風で、いいのです。」
本展の出展作家は、吾妻吟、村井祐希、小菅星奈、藍白操、志村游の5名。
主催の吾妻吟は、本年度「第18回 岡本太郎現代芸術賞」に、同賞史上最年少の19歳で入選を果たした気鋭の作家であり、主にテキストとして綴った物語および、そこから生み出された世界観が表出するインスタレーション作品を発表。
村井祐希は、吾妻吟と同じく「第18回 岡本太郎現代芸術賞展」に入選、特別賞を受賞。その後、「パープルーム大学」「カオス*ラウンジ」のグループ展に参加し、8月には初個展を開催。フォーマリズムや新表現主義からの突出、3、4mをゆうに超える巨大な絵画作品で注目を集めている。
小菅星奈は、これまでに「メンヘラ展」「アジテート展」などの気鋭アーティストによるグループ展に参加。サブカルチャーに強い影響を受けながら、意図せずとも自身が「少女」であることで、少女文化の内面にある荒々しい凶暴さを描くという独自の発展を遂げているように思える。
藍白操は、國學院大學文学部にて美学を専攻しており、ポストヒストリカルな(主体なき)表現をテーマに、アプロプリエ―ションの概念を取り入れたコンセプチュアルな作品を制作(会期中、トークイベント「美術を物語る – ポストヒストリカルの視点から」開催)。
志村游は、独自の人工文化・人工言語である「クレリカ」を製作。「クレリカ」を舞台としたゲームの開発をひとつの目的として、イラストレーションや形而上学など幅広い手法で「クレリカ」を用いた作品を発表している(会期中、トークイベント「コトバは世界を変えうるか」開催)。
本展が目指すものは、先に吾妻吟が「それは大きな革命である必要はありません。蝶が起こす程度の風で、いいのです。」と述べた通り、「ゆるやかな変化」です。展覧会タイトル「 ≠(not equal)」は、この「ゆるやかな変化」を見逃さないため、見い出すための補助線として設定しました。若い吠える威勢の塊たちが、この時代をどのように「破壊」していくのか、是非、ご注目ください。
TAV GALLERY STAFF
作家プロフィール
吾妻 吟 AGATUMA GIN
1995年 千葉県生まれ
2005年 管弦楽で全国一位(最優秀賞)受賞
2014年 武蔵野美術大学芸術文化学科入学(在学中)
2015年 「95年画廊」発足
世界を変える一手を。ふだんはインスタレーションや映像、パフォーマンス、小説などの幅広い領域でオルタナティブな活動をしている。物語や虚構と現実といった命題を多く取り組んでおり、テキストを使ったものが多い。2015年以降、自身と同じ1995年生まれの作家を集めた95年画廊を創設。新たなコミュニティの創出を手がける。
[受賞歴]
2015 「第18回 岡本太郎現代芸術賞」入選
[グループ展]
2015 「第18回 岡本太郎現代芸術賞展」(川崎市岡本太郎美術館、神奈川)
Twitter : @AgatumaGin / @kyujugonen
Facebook : https://www.facebook.com/profile.php?id=100010126693814
村井 祐希 Yuki Murai
1995年 神奈川県横浜市生まれ
2012年 三浦学苑にて関東卓球大会団体戦第二位
2013年 多摩美術大学絵画学科油画専攻入学(在学中)
[受賞歴]
2015 「トーキョーワンダーウォール公募2015」入選
2015 「第2回CAF賞」優秀賞
2015 「第18回 岡本太郎現代芸術賞」特別賞
2014 「TAMA ART COMPETITIONE 2014」準大賞
[個展]
2015 「SUPER PROMINENCE EXPRESSION!」(DUST BUNNY、東京)
[グループ展]
2015 「カオス*ラウンジ新芸術祭2015 市街劇「怒りの日」」(もりたか屋、福島)
2015 「カオス*ラウンジ7「穏やかじゃない」」(ビリケンギャラリー、東京)
2015 「パープルーム大学物語」(ARATANIURANO、東京)
2015 「トーキョーワンダーウォール公募2015 入選作品展」(東京都現代美術館、東京)
2015 「第2回CAF賞作品展」(3331アーツ千代田、東京)
2015 「第18回 岡本太郎現代芸術賞展」(川崎市岡本太郎美術館、神奈川)
Web : http://yuki7321ymcutman.wix.com/yukimurai
小菅 星奈 Hoshina Kosuge
1995年 千葉県生まれ
2012年 千葉県立松戸高等学校芸術科入学
2015年 千葉県立松戸高等学校芸術科卒業
みんなの視線がほっしーな。
みんなの心がほっしーな。
あなたの意識に潜り込む宗教、小菅星奈です。
[グループ展]
2015 「お茶の水アートピクニック2015」(東京)
2015 「アジテート展」(新宿眼科画廊、東京)
2015 「メンヘラ展2.5」(Cafe FLYING TEAPOT、東京)
2015 「千葉県立松戸高等学校芸術科 第9回卒業制作展」(松戸市文化ホール 市民ギャラリー、千葉)
2014 「デザインフェスタvol.39」[巨大ライブペイントエリア](東京ビッグサイト、東京)
2014 「メンヘラ展」(デザインフェスタギャラリー、東京)
Web : http://hoshina-kosuge.com
Twitter : @watashi_hoshina
Facebook : https://www.facebook.com/kosuge.hoshina
藍白操 Aizilo misao
1995年 埼玉県生まれ
2014年 國學院大學文学部入学(在学中)
ジェフ・クーンズの衝撃から芸術に関心を示すようになり、いつしか制作をするようになった。
情報過多の時代にあって、我々は自身を取り巻く膨大な量の情報の真偽を問い、取捨選択し、体系化することが求められる。そこで、思考の明晰さが不可欠だと考え、日常にあって潜在的なそれを美的な方法で衝き動かすことを試みる。
[グループ展]
2014 「アジテート展」(新宿眼科画廊、東京)
[その他の活動]
2015- 「bitecho[ビテチョー]」ライター
Web : http://aizilo.blog.fc2.com
Twitter : @Aizilo
志村 游 Shimura Yu
1996年 千葉県生まれ
2012年 千葉県立松戸高等学校芸術科入学
2015年 千葉県立松戸高等学校芸術科卒業
人工文化・人工言語クレリカを製作中。イラストレーションや形而上学など幅広いメディアでクレリカを創作しており、将来的にはクレリカを舞台にひとつのゲームを作成し、さらにはメディアミックス展開を計画中。
[グループ展]
2015 「平和のめぐみ展」(ギャラリー恵風、埼玉)
2015 「絵と本展」(ギャラリー恵風、埼玉)
2013 「紙と鉛筆ふたり展」(Gallery 空、東京)
[その他の活動]
2015 金澤麻由子「Polyphony Road ~森の神話~」プログラム協力
2015 人工言語学会 設立
Web : yuhr.lv9.org/qr
Twitter : @qothr
Tumblr : tumblr.com/yuhr
SoundCloud : @tryhr
Instagram : ephur
開催概要
名称:95年画廊 拡張展「 ≠(not equal)」
日程:2015年10月17日 (土) – 10月25日 (日)
会場:TAV GALLERY(東京都阿佐ヶ谷杉並区北1-31-2)[03-3330-6881]
時間:11:00 – 20:00
休廊:木曜日
出展者:吾妻吟、村井祐希、小菅星奈、藍白操、志村游
レセプションパーティ:2015年10月17日 (土) 18:00 – 20:00
関連企画
□ 2015年10月18日(日)14:00 – 16:00
TALK EVENT 志村遊「コトバは世界を変えうるか」
ゲスト : 間枝ヲカユ
□ 2015年10月24日(土)16:00 – 18:00
TALK EVENT 藍白操「美術を物語る – ポストヒストリカルの視点から」
ゲスト : TYM344
ステートメント
95年画廊 拡張展「 ≠(not equal)」
ステートメント
1
まずはTwitter上で展覧会を開催する際に必ず提出している、95年画廊の簡単な説明テキストを掲載します。ご存知の方は飛ばして頂いてかまいません。以下。
95年画廊は1995年生まれのみのアーティストを扱う画廊として、Twitterに出現しました。この画廊の特徴は二つあります。
① Twitter上の画廊である。
② 作家が一世代に限定されている。
ということです。まず、なぜTwitter上での画廊、展覧会なのか? これは、若手の展覧会の悲惨さが一つに挙げられます。稀にある成功例を除いて、若手の展覧会というものは少数の人の目にしか触れないことが多く、内輪だけの「思い出作り」になってしまいがちです。また、現代美術全体の最近の動向は、一般の人の目にも触れづらい現実があります。そこで、「リツイート」というシステムによって、無差別に展覧会を出現させます。閉鎖的な昨今日本の現代美術を「開く」手法としての一つの提案です。
では次に、なぜ世代を限定したのか? それは集合するための指標を掲げるためです。95年画廊は、世代という限定的かつ排他的になりがちな繋がりを、一時的な集合のための指標として扱います。若手が、ある共通項をもって集合できる場があれば、そこに一つの興りが生まれる可能性があります。不景気な気配をいち早く払拭するには、分かりやすい目印と共通項が必要だと考えました。
なぜ、1995年に限定したか。というのは画廊の総責任者である吾妻吟が95年生まれで、この世代に理解がある事が理由の一つにあります。また、95年生まれは全課程ゆとり教育の完全なゆとり世代であり、節目の年に様々な事件に遭遇した世代であります。この世代のアーティストを一堂に会すことは、現象の観察として面白いのではないか? と考えた節があります。サリンと震災の空気の中に生まれ、欺瞞の教育に戸惑い、青春のただ中に震災が猛威を振るう。
こんな世代のアーティストは、いったいどんな作品を作り、何を求め、何に怒り、これから何をするつもりなのか……。
95年画廊は限定的であります。1995年生まれのアーティストが若手でなくなったら、「95年」という旗は降ろします。また、馴れ合いになるようなら自ら解散します。では、共に時代を盛り上げてゆきましょう。
2015. 6.4
この文を展覧会のツイートの前に必ず設けた理由は、慣例(展覧会前にステートメントあるいはそれに準じたテキストを掲げる)に倣ったというわけではありません。掲げる必要があったから、提示したのです。
例えば、戦争では敵地に入るためにまず爆薬を使って入り口を確保することがあります。そうしないことには、兵士を無駄死にさせてしまうからです。このテキストはその爆薬の役割を果たしています。余計な批判は退け、作家の作品をスムーズに鑑賞していただく。そのためのものです。ですから、ステートメントといってもあくまで「除雪機」的なものでした(とは言え、このステートメントが私の真意であることには変わりありません)。それをここに提言しておきます。
2
今回の展覧会が、いままでの展覧会と異なる点は当然、「実地」での開催、ということです。
今までの95年画廊はTwitter上で展覧会を行うことの、有用性を重視してきました。有用性とは拡散力、機動力に優れた展覧会をメイクする、ということです。この画廊の運営に、金銭はほぼかかりません。これは若手の作家および美術関係者が自力で環境を作っていく上で非常に重要な要素でした。即効で、拡散力に富み、経済的な支障がない、この特徴を持ったメディアを若手が使うことは、いわば必然でした。
しかし裏を返せば、「実地」で展覧会を開くことが本来の願望としてあるのです。これまでの95年画廊は、危険でローリターンな「実地」から退いて、有効なネット世界で活動することを選択してきました。無論これからもそうするつもりです。ですが、それではいつまで経っても、この画廊が「実像」を持ち得ないのも事実です。「実像」を持たないことには、この画廊がどういうものなのかということも見えてきません。「実像」を得るためには、「実地」で何かに憑依する必要がありました。TAV GALLERYは、4階建てのビルの1階部分に入居しており、2階から4階はペアレンティングホームとなっています。そうすることによって、ギャラリーを運営する上で最大の困難となるマネタイズがギャラリー以外の収益によってまかなわれているのです。このTAV GALLERYのシステムによって作家(95年画廊)はツイッターでの活動と同じく、経済的な圧迫を最小限に抑えられました。また、TAV GALLERYは優れた広報力を持ち併せており、これはツイッターの拡散力以上に強力なものでした。いわばTAV GALLERYはネット世界での活動に近い能力を持ったまま、「実地」での展覧会を開催できる最適な憑依体だったのです。
3
95年画廊を創立した時点で、私は持続可能性というものを全く念頭に置いていませんでした。1995年という年代について持ち上げる意義があるのは、2015年以外にないからです。無論、今後、語る意味のある年代が生まれてくるかもしれませんが、決定的なのはこの2015年と言えます。2015年は、1995年生まれの作家が20歳になる年であり、地下鉄サリン事件、阪神淡路大震災、エヴァンゲリヲンから20年目の年でもあります。この年に、1995年生まれとして、何らかのアクションを起こさなければ、というある種の使命感に駆られました。いまこの現在に、「標」のようなものを打ち付けておくべきだと。そう感じたのです。
1995年生まれが特異なのは、それら特殊な事件を体験しながら、ある種「なにも知らず」に生きてきたという点です。もっとも実際に体験したわけでないという95年生まれは多いでしょう。しかし、時代の空気を肌を感じ、TVを目にし、大人達の話を聞いていれば、おのずとその雰囲気というものを体感したと言っておかしくないはずです。その95年生まれがある特殊性を持っているとしたら、展覧会として持ち上げる意義はあると思っています。
私が95年画廊に望む、最終的な展望は、自分と同じ世代の作家達が、この停滞した時代にブレイクスルーを巻き起こすことです。それは大きな革命である必要はありません。蝶が起こす程度の風で、いいのです。今まで見た展覧会と、どこかちょっと違う、というくらいの変化が、可能性として時代を破壊する竜巻になるのです。
吾妻 吟