「ノアの安産祈願展」[ 6/26 (fri) – 7/19 (sun) ]


 

 

アフターコロナの時代の節目に、今、私たちが可能な「祝福」とは何か。祝福の言語由来は、キリスト教の文脈上では「信仰の告白」を指し、私的な儀礼を越えた公的な領域での儀礼を「祝祭」と呼ぶ。「安産祈願」は信仰の種類に於いては最も根源的で、私的であり公的な領域をも占有していることから、普遍的な人権意識を再考すべく、本展タイトルとして採用した。多死社会を前に”安産”を”祈願”することの横暴性と、このワードが一種の疎外的な立場を産み、二項対立構造を扇動していることは自覚的である。ノアが、文明の再建のための遺伝子を選択しなければならなかったように、私たちには新たな秩序を創造する”選択”が可能である。

 

来る世界的乱世をノアの方舟に登場する「大洪水」に見立て、アフターコロナの時代の芸術家たちによって制作される創造物を、ノアが文明の再建を求め方舟から飛ばした「鳩(ハト)」に見立てる。従来の神話は、鳩はオリーブの葉を加えて方舟に戻り、文明の再建がまだ可能である事をノアに知らせた。現在に於いて、芸術作品が接続する先 = オリーブの葉の代替になるものとはなにか。本展のメインビジュアルが、銀装飾の某ブランドイメージを借用しているのは、屈託しきった資本主義に対するアイロニーであって、経済合理性を除いた、芸術運動の成立が可能かどうかを、私自身が試行していた他ならない。

 

COVID-19の到来によって、現実の空間、あるいは展覧会という形式は、その機能の再考を迫られている。本展は、その指針を、コロナ禍を契機に感じる、”均一の秩序” から “私的な秩序” へ、といった状況変化に見出し、私的な意思の共有が、公的に機能する行動であったことを本展を通し示したい。

 

 

  佐藤栄祐  Eisuke Sato


1.京都市在住の笹岡由梨子は独自の表現手法「絵画軸映像」を通して、人形劇に実写の手や顔を映像内で当てはめストーリーを展開することで知られる現代美術家です。本年度から滞在制作予定のロシア、及び社会主義制度から連想されるイメージを元に、首都モスクワで永続的に保存されているウラジーミル・レーニンの遺体を模した立体作品と、三つの画面で構成される旧ソ連軍の軍人に扮装したビデオ作品を出展いたします。

 

2.台湾移民二世の庄島明源は、自分以外の制作者に介在し、制作主体の構成論理について思考し制作するコンセプチュアルアーティストです。2016年に開催された初個展「44442回生まれた羽ばたきをめぐる研究。(Wrokstation, 高円寺)」では、ジャックデリダの「声と現象」の言語意味構造の連鎖性のダイアグラムを陶芸用粘土で立体化するという先鋭的な企画に挑戦し話題を呼びました。本展では既存の絵画のあり方を更新し続ける今現在、最も力があると謳われる平成を代表するアーティストの一人、村井祐希との共同制作を通し、バックグラウンドの相違や芸術領域に於ける”債権の移動”に着眼した共同作品を発表いたします。二人の共同制作は、2018年に開催された「村井のいっぽ (MAHO KUBOTA GALLERY , 神宮前)」以降、約2年ぶりとなり、近年の村井祐希は人間と絵具の擬似的な融合を実践する「動かす絵画」の制作を始めとして、異種混合の共生における身体性を追求しています。

 

3.生須芳英は、時代の最新の空間概念を視覚芸術に落とし込む規格外の表現力を持った気鋭のアーティストです。TAV GALLERYでは「TAV 1th Anniversary Exhibition (2015)」、「彦坂尚嘉企画 切断芸術展 “Disconnection”」(2017)」以降、3度目の出展となります。本展では「絵画の地平線 / 祝宴に於ける絵画」と題したデジタルペインティングを出展いたします。

 

4.山縣瑠衣は、絵画の遠近法的な空間を基調とし、作品が生成する状況に於いて、主体(自身の身体像)と鑑賞者が流転するような結果を導き出す試みを行う新進気鋭のペインターです。また、今年度に開催された個展「ATLAS (JINEN GALLERY, 小伝馬町)」では地図製作の技法を用い、身体表象を多角的に得るための平面作品シリーズを発表。本展では、文明と自然というイデオロギーに対し、自然として規定されてきた自身の身体を墓標と見立てた作品と、新たな秩序としての変身可能性をもつ私的な身体像を現した絵画や立体作品を出展いたします。

 

 

TAV GALLERY STAFF

 

開催概要

 

名称 : ノアの安産祈願展
会期 : 2020年6月26日 (金) – 7月19日 (日)
会場 : TAV GALLERY (東京都杉並区阿佐谷北1-31-2) [03-3330-6881]
時間 : 13:00 – 20:00
休廊 : 水曜、木曜

出展作家 : 笹岡由梨子、庄島明源、生須芳英、村井祐希、山縣瑠衣

レセプションパーティ : 6月26日 (金) 19:00 – 21:00 (※招待制)

 

出展作家プロフィール

 

 

1.

笹岡 由梨子  Yuriko Sasaoka 

https://sasaokayurikoworks.wixsite.com/sasaokayuriko

 

1988年  大阪府生まれ
2012年  京都市立芸術大学美術学部油画専攻卒業
2014年  京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程油画専攻修了
2017年  京都市立芸術大学大学院美術研究科博士(後期)課程メディア・アート専攻 満期退学

主な展示

2019年  「太陽Ⅰ」同時代ギャラリー(京都)
2017年  「JAPEDONIA」Ns ART PROJECT(大阪)
2017年  「command X」8/ ART GALLERY/ Tomio Koyama Gallery(東京)
2017年  「Hello Holy!」ギャラリー@KCUA(京都)

 

(photoed by はむぞう)

2.

庄島 明源  Meigen Shozima

 

1989  東京都亀戸生まれ
1994 – 2004 台湾人の両親と台北に移住
2019  横浜国立大学博士前期課程建築都市文化専攻 Y-GSC所属

主な展示

2018年  「村井のいっぽ」MAHO KUBOTA GALLERY(東京)※協力
2018年  「ゲームポリヘドロン」中央本線画廊(東京)
2016年  「44442回生まれた羽ばたきをめぐる研究。」Workstation.(東京)

 

 

3.

生須 芳英 Namasu Yoshihide 

https://yoshihide-namasu.tumblr.com/

 

1991年  群馬県生まれ
2012年  彦坂尚嘉に師事
2014年  多摩美術大学造形表現学科中退

主な個展

2018年   「第四回 大北朝鮮帝国展」中野ZERO(東京)
2018年   「第三回 大北朝鮮帝国展」金沢芸宿(東京)
2017年   「第二回 北朝鮮展」高円寺素人の乱(東京)
2017年   「第一回 大北朝鮮帝国展」中野ZERO(東京)

主なグループ展

2017年  彦坂尚嘉企画「切断芸術展 “Disconnection”」TAV GALLERY(東京)
2017年  「切断芸術運動というシミュレーション・アート展」東京都美術館(東京)

 

 

2.

村井 祐希  Yuki Murai 

https://yuki7321ymcutman.wixsite.com/yukimurai

 

1995年  神奈川県横浜市生まれ
2012年  三浦学苑にて関東卓球大会団体戦第二位
2013年  多摩美術大学絵画学科油画専攻入学
2017年  多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業

主な展示

2018年  「村井のいっぽ」MAHO KUBOTA GALLERY(東京)
2017年  「Phantom to the past」ホテルアンテルーム(京都)
2016年  「千年に一度のムライ」トーキョーワンダーサイト渋谷(東京)

主なグループ展

2017年  「TARO賞20年/20人の鬼子たち」岡本太郎記念館(東京)
2016年  「Debris*Lounge」ゲンロンカオス*ラウンジ五反田アトリエ(東京)

 

 

4.

山縣 瑠衣  Yamagata Rui 

https://yamagatart.tumblr.com/

 

1997年  長野県生まれ
2016年  東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻入学
2020年  同学大学院美術研究科油画専攻在籍中

主な個展

2020年  「ATLAS」JINEN GALLERY(東京)
2020年  「Fumblerules」東京藝術大学卒業制作展(東京)
2020年  「.trinity」JINEN GALLERY(東京)