高田冬彦 x 二藤建人「不可能な人」[ 2/15 (fri) – 3/3(sun) ]
高田冬彦と二藤建人。表現が対極的な両者の接続先を <4G回線やビッグデータが徘徊する世界> と <アーキテクチャが残存し車や人間が徘徊する世界> と見立て、両者の表現における心身と、芸術を鑑賞する我々の心身の滞在場所を探すべく、本展のキービジュアルは、其れ等の世界を意識的にも無自覚的にも歩く、我々の「足」とした。この「足」は大地を踏み出しつつも、仮想世界にも着地しつつある。この「足」が踏み込む先として、展覧会を主宰する主観的な立場から本展「不可能な人」について述べたい。
「Internet is a social right (インターネットは社会的権利である)」という言葉をスローガンに掲げるエストニアは、電子政府によって手間のかからない政治を実現させた。そうした世界的な動向を思えば、情報世界に余儀なく侵食されながらも、日々同じ作業に明け暮れ、変わることの無い都市のパースペクティブに疲弊し続ける状況は、なんと不条理なことだろうか。このような電子化の過度期に於ける葛藤は「デジタルイミグラント」と言われる世代を象徴する問題である。人間はこれまで、無数の言説によって、領土や、言語や環境の規制(コード)を規定してきた。あらゆるコードの枠内で、自分が何者なのかという問いを立てる暇もなく、膨大な情報を取捨選択する日々。ふと「山へ登りたい」と思ったとしても、好きな時間に動くことはできない。しかしそんな社会の中でも、生産の為の充分な「可能性」はあるのだ。それは外部に触発されるための我々の「足」と、そうした「足」を持つ場との出会いの中にある。人間という存在が代替不可能性によって偶発的に成立している歴史上の産物と定義づけられようとも、大衆的な集合意識やビッグデータが「芸術家」を脱コード化した「天才」と定義づけようとも、芸術家と社会を繋げるべく、出会いと生産の瞬間まで、彼らをあくまで不可能性へと留める場は存在しなければならない。
高田冬彦は、かつてインターネットのプラットフォームを通して映像作品の発表を行い、2010年にYoutubeにアップロードした彼自身の処女作とも言える「JAPAN ERECTION (2010)」は現在までに215万再生を記録させている。自身の身体を歴史的偉人やポップアイコンなどに変身させたのちに、四畳半の支配的な空間内で様々なストーリーを可視化させ、強烈な体験をインターネットブラウザを通し世界中に散らばる鑑賞者に与えている。
一方の二藤建人は初源的な製作プロセスを通し、掌のみを地表に晒す「山頂の谷底に触れる (2013)」や、山の裏側を可視化させ、重力に反発する事を示唆する「反転の山 (2013) 」などのインスタレーション作品を通し、自身の体をもって社会との触れ合いを続け、人文主義的な欲求を形に留める。本展には高田冬彦は短編動画編集アプリ「TikTok」から着想を得た新たな「祝福」の形を想起させる新作映像作品が出展され、二藤建人は「自由な落下」という矛盾した理想を体現する作品とあわせて、新たに落下の不可能性を提示する大型の体験型作品を出展する。
TAV GALLERY STAFF
開催概要
名称 : 高田冬彦 x 二藤健人「不可能な人」
会期 : 2019年2月15日 (金) – 3月3日 (日)
会場 : TAV GALLERY (東京都杉並区阿佐谷北1-31-2) [03-3330-6881]
時間 : 13:00 – 20:00
休廊 : 水曜、木曜
協力 : gallery N
レセプションパーティ : 2月15日 (金) 18:00 – 20:00
トークイベント :
2月23日 (土) 18:00 – / 高田冬彦 × 二藤健人
アーティストプロフィール
高田冬彦(たかた・ふゆひこ)
現代美術家、映像作家。作品は主に作者の自宅アパートで撮影され、時に作者本人も登場する。密室で渦巻く独りよがりな夢想のようなものを、ジェンダーやトラウマ、神話やポップカルチャーなどといった要素と混ぜ合わせながら表現する。手作り感あふれるチープな演出や、ケバケバしい色彩センスも、特徴のひとつである。主な個展に『DREAM CATCHER』(Alternative Space CORE/2018年)、主なグループ展に『MOTアニュアル 2016|キセイノセイキ』(東京都現代美術館/2016)など。
1987 広島県生まれ
2007 美學校修了
2011 東京造形大学 デザイン学科写真専攻 卒業
2013 東京藝術大学大学院 美術研究科油画専攻 修士課程修了
2017 東京藝術大学大学院 美術研究科博士後期過程 油画研究領域修了
【主な個展】
2018年 「Dream Catcher」/ Alternative Space CORE(広島)
2017年「LOVE PHANTOM」/Art Center Ongoing(東京)
2016年「STORYTELLING」/児玉画廊(東京)
2014年「MY FANTASIA II」/Art Center Ongoing(東京)
2013年「MY FANTASIA」/児玉画廊(京都)
【主なグループ展】
2018年「TERATOTERA祭り」/三鷹駅周辺
2017年「SPRING FEVER」/駒込倉庫(東京)
2016年「MOTアニュアル2016 キセイノセイキ」/東京都現代美術館
2016年「博士審査展」/東京藝術大学大学美術館
2015年「Super Body Maniac」/児玉画廊(東京)
2015年「現在幽霊画展」/TAV GALLERY (東京)
2014年「Drawing03 ¬preference」/澁谷画廊(東京)
2013年「II TENKI group show with Japanese artists」/WILLEM BAARS PROJECT(アムステルダム)
2013年「メメント・モリ ~愛と死を見つめて~」 /白金アートコンプレックス(東京)
2013年「卒業・修了作品展」/東京藝術大学
2011年「EMERGING / MASTER 1 会田誠 | 美術であろうとなかろうと」/トーキョーワンダーサイト本郷(東京)
2011年「ZOKEI展(卒業作品展)」/東京造形大学(神奈川)
2010年「NEO NEW WAVE」/island(千葉)
【主な上映】
2018年「Bodyscapes:new film and video from Japan」/ Fabrica(ブライトン) 他巡回
2016年「国立奥多摩映画館 - 森の叫び -」/国立奥多摩映画館 (東京)
2011年「TERATOTERA祭り」/吉祥寺バウスシアター(東京)
【その他】
2018年 演劇「地底妖精」市原佐都子(Q)とのコラボレーション作品/早稲田小劇場どらま館(東京)
2017年 演劇「地底妖精」市原佐都子(Q)とのコラボレーション作品/SCOOL(東京)
2015年「BONUS 第2回 超連結クリエイション 牧神の午後篇」/VACANT (東京)
二藤建人 (にとう・けんと)
1986年、埼玉県生まれ。同県在住。接触や運動の新たなバリエーションを提案しながら、人類史上淘汰・忘却された事象を意識した「生」への思想的アプローチを作品化している。代表作には、自身が一枚布の雑巾となり世界各地の街を拭き上げながら全身で都市を知覚し、その身に蓄積させていく「雑巾男」や、他者の重さを真下から両足で踏み締める装置「誰かの重さを踏みしめる」などがある。
【主な個展】
2018年 「ヘルニア」第1部《労働のエステティクス》gallery N 神田社宅(東京)
2018年 「ヘルニア」《自由な落下のために》gallery N (愛知)
2017年 「たゝ゛吹き抜ける風」 Art Center Ongoing(東京)
2017年 「凍てつく雲のふわふわ」 gallery N 神田社宅(東京)
2015年 「私の愛は私の重さである。」gallery N (愛知)
2014年 「傘の内側に降る雨」 Antenna Media (京都)
2013年 「山頂の谷底に触れる」 gallery N (愛知)
2012年 「全身を以て認めざるを得ない|Red Porcupines」GALLERY TERRA TOKYO(東京)
2012年 「不測に向かって放り込む」トーキョーワンダーサイト本郷 (東京)
【主なグループ展】
2017年 「自由の場所」京都精華大学(京都)
2017年 「引込線2017」所沢市第二給食センター(埼玉)
2017年 「のっぴきならない遊動」京都芸術センター (京都)
2016年 「中景 –The Glory (of phenomenon) : Act Ⅱ–」ホテルアンテルーム京都 gallery 9.5(京都)
2016年 「信州大学人文学部芸術コミュニケーション分野『友政麻理子と二藤建人』」
旧松本歩兵第五十連隊糧秣庫、awai art center(長野)
2016年 「ニュー・ヴィジョン・サイタマ Ⅴ」埼玉県立近代美術館(埼玉)
2016年 「あいちトリエンナーレ2016」岡崎会場(愛知)
2016年 「指導者の声は紙の擦れる音をかき消す程度には大きい。」gallery N(愛知)
2015年 「なるがままではいられない」22:00画廊(東京)
2015年 「第19回岡本太郎現代芸術大賞展(TARO賞)」川崎市岡本太郎美術館(神奈川)
2014年 「egØ -「主体」を問い直す-」 Punto(京都)
2013年 トーキョーストーリー第一章「今、此処」トーキョーワンダーサイト本郷(東京)
2013年 台湾・日本芸術文化交流事業「Do it yourself, Brain massage —可塑的な身体と術—」東京藝術大学東京 (東京)
2013年 「FLUXUS FORECAST」The National Art Studio(韓国)
2012年 「青梅ゆかりの名宝展」 国立奥多摩美術館(東京)
【レジデンス・プログラム】
2013 TWS二国間作家交流プログラム、ゴヤンアートスタジオ(韓国)
2012 TWS国内クリエーター制作交流プログラム、トーキョーワンダーサイト青山:クリエーター・イン・レジデンス(東京)